PR

自衛官の副業申請(兼業承認)の通し方2026|施行規則の2基準・申請書に書くこと・通りやすい類型

キャリア・横断
記事内に広告が含まれています。

「自衛官の副業は承認を取ればできる」——これは自衛官の副業はどこから規則違反?で条文から確認したとおりです。では、その承認はどうやって取るのか。この記事は申請の通し方だけを扱います。根拠にするのは自衛隊法62条・63条と、承認の基準を定めた自衛隊法施行規則61条・63条〜65条です。「何が通るか」は条文に書いてあるので、そこから逆算して申請を組み立てます。


結論:審査される基準は2つだけ。申請書はその2つに答える文書にする

自衛隊法施行規則61条1項は、防衛大臣が承認できる条件を次のように書いています。

  • 基準①:利害関係がない——隊員の職務と、就こうとする地位・営もうとする事業との間に「特別な利害関係がなく、又はその発生のおそれがない」こと
  • 基準②:職務に支障がない——その地位に就く・事業を営むことで「職務の遂行に支障を生ずることがない」こと

この2つを満たすと認められる場合に限り承認できる、という書き方です。そして同規則63条で、報酬を受けて他の職に就く場合や営利企業以外の事業を行う場合(自衛隊法63条の類型)にも、この61条の基準がそのまま準用されます。

つまり申請書は、「やりたいことの説明」ではなく、「①利害関係がないこと ②支障がないこと」を相手が確認できる文書として書くのが通し方の本体です。


条文で確認する|承認のしくみ(自衛隊法+施行規則)

条文 何を定めているか 申請で効く点
自衛隊法62条 営利企業の役員・自営は原則不可。防衛大臣(委任先)の承認で例外 自営・役員型はここで申請
自衛隊法63条 報酬を受けて他の職・営利企業以外の事業を行うには防衛大臣の承認 講師・執筆・単発の指導はここ
施行規則61条1項 承認の基準=利害関係なし+職務に支障なし 申請書の2本柱
施行規則61条2項 承認の範囲内で勤務時間を割ける。ただし割いた時間分の給与は減額 勤務時間外に限定すると減額の話にならない
施行規則61条3項 承認後でも、上官から職務の勤務を命じられたら直ちに従う 「招集・命令が最優先」を申請書に明記できる
施行規則64条 承認の権限は防衛大臣が指定する隊員に委任できる 実際の決裁は部隊・機関の長になることが多い
施行規則65条 申請手続に必要な事項は防衛大臣が定める 様式・添付書類は所属の人事で入手する

注意点は最後の65条です。申請書の様式や添付書類は法令の本文ではなく、防衛大臣が定める手続(訓令・通達)に置かれています。ネットで拾った「申請書のテンプレ」をそのまま出すのではなく、必ず所属の人事担当から現行の様式をもらってください。この記事で示すのは「様式に何を書けば基準①②に答えられるか」の中身です。


申請の流れ|5ステップ

ステップ1:類型を決める(62条型か63条型か)

まず自分のやりたいことがどちらの条文に当たるかを決めます。

  • 62条型:会社の役員・顧問になる、自分で事業を営む(ネットショップ、継続的な請負など)
  • 63条型:報酬を受けて他の職に就く(非常勤の講師など)、営利企業以外の事業を行う(講演・執筆・資格を生かした単発指導など)

迷う場合は63条型に寄せた設計にするのが現実的です。「自分で事業を営む」より「依頼を受けて単発で報酬を受ける」形のほうが、基準②(支障なし)を説明しやすいからです。

ステップ2:人事担当に事前相談する(書く前に聞く)

申請書を書く前に、所属の人事担当(人事係・総務)に「こういう内容で承認申請を考えている」と相談します。ここで得るものは3つです。

  1. 現行の様式と添付書類(65条の手続はここでしか分からない)
  2. 決裁ルート(64条の委任先が誰か=部隊長か、もっと上か)
  3. 過去に通った類型・通らなかった類型の肌感

「聞いたら断られそう」という理由で飛ばす人がいますが、相談の記録が残ること自体が自分を守ります。無承認で始めたあとに発覚するのと、相談して断られるのとでは、処分の重さがまったく違います。

ステップ3:申請書に「基準①②の答え」を書く

様式が何であれ、書く中身は同じです。基準①②に対応させて整理します。

記載項目 何を書くか どの基準に答えるか
相手先 依頼元・団体の名称、事業内容、自衛隊・防衛省との取引の有無 ①利害関係なし
活動の内容 何をするか(講演のテーマ、執筆の媒体、指導の内容)。職務上知り得た情報を使わないこと ①利害関係なし
報酬 金額・支払い方法・1回限りか継続か ①(過大な報酬は利害関係を疑われる)
期間・時間 いつからいつまで、何曜日の何時〜何時。勤務時間外・休日に限ること ②支障なし
即応・命令への対応 招集・勤務命令があれば直ちに従い、活動を中止・延期すること(施行規則61条3項) ②支障なし
服務・信用 制服・階級・部隊名を営業に使わないこと、機密保持、政治的行為に当たらないこと ②+自衛隊の信用

ポイントは「勤務時間外に限る」を明記することです。施行規則61条2項は、承認の範囲内なら勤務時間を割くことも認めていますが、その分は給与が減額されます。最初から勤務時間外に限定して申請すれば、減額の話も、支障の疑いも、同時に消えます。

ステップ4:上司経由で提出し、決裁を待つ

申請は所属長を経由して決裁権者に上がります。64条で権限が委任されている場合、決裁は部隊・機関の長になることが多いですが、案件の性質によっては上級部隊の判断になります。人事担当に「どこまで上がるか」「通常どのくらいかかるか」を聞いておき、決裁が下りる前に活動を始めないのが鉄則です。「申請中だから大丈夫」は成立しません。

ステップ5:承認後の義務を守る(範囲・変更・報告)

  • 承認の範囲内で:承認された相手先・内容・期間・報酬の範囲を超えない。増えたり変わったりしたら再申請
  • 勤務命令が最優先:施行規則61条3項。招集・当直・訓練と重なったら副業側を止める
  • 税金の手続き:承認を取っても申告は別。給与以外の所得が年20万円を超えれば所得税の確定申告、20万円以下でも住民税の申告が必要

通りやすい類型・通りにくい類型|基準①②で仕分ける

類型 基準①(利害) 基準②(支障) 見立て
経験・資格を生かした単発の講演・執筆(防災、安全管理、体力づくり、資格対策) 相手先が防衛省と無関係なら問題になりにくい 単発・日時指定・休日に組める ◎ 承認制度が本来想定している類型
非常勤の講師(資格学校、スポーツ指導) 同上 定期の拘束があると支障を疑われる。休日限定なら説明可 ○ 時間設計しだい
小規模な不動産賃貸(相続・転勤) 問題になりにくい 管理を委託すれば支障なし ○ 「自営」に当たらない規模なら承認不要の余地もある。人事に確認
ネットショップ・物販を継続的に営む 仕入先・顧客しだい 在庫・発送・顧客対応が日常的に発生=支障を疑われやすい △ 62条型。通りにくい
駐屯地周辺の店・関係業者での仕事 利害関係が生じやすい ✕ 基準①で止まる
時給制のアルバイト(夜間・深夜シフト) 問題なし 即応・疲労の面で支障を疑われる ✕ 基準②で止まる

仕分けの軸は単純で、「相手先が防衛省・部隊と無関係」「休日・勤務時間外に自分で日時を決められる」「呼ばれたら止められる」の3つがそろう類型ほど通りやすい、ということです。


申請が通らなかったとき・通ったあとに変えたいとき

通らなかった場合

不承認の理由は基準①か②のどちらかに帰着します。①なら相手先を変える、②なら時間設計(休日限定・単発化)を変えて再申請するのが筋です。「不承認なのにこっそりやる」は、無承認よりも重く見られます(申請して止められた事実が残るため)。

通ったあとに内容が変わる場合

報酬が増える、相手先が増える、期間を延ばす——どれも承認の範囲を超えるので再申請です。面倒でも、承認書の控えと一緒に変更を申し出るほうが、結果として早く済みます。


在職中に「承認がいらない範囲」で土台を作る

申請はハードルが高いと感じるなら、承認が要らない範囲で先に動くのも現実的です。報酬が発生しない活動(学習、作品づくり、SNSの無償発信)は自衛隊法63条の射程外ですし、資産運用は事業でも職でもありません。詳しい線引きは規則と処分の線引き、退職後・予備自衛官になってからの自由度は予備自衛官は副業していい?にまとめています。

将来の承認申請を見据えて「どんな案件が世の中にあり、相場はいくらか」を先に知っておくのも有効です。ランサーズのようなプラットフォームは登録と閲覧に費用がかからないので、申請書の「活動の内容・報酬」欄を具体的に書く材料になります(受注した時点で承認の対象になるので、在職中に受けるのは承認後に)。[PR]


記載例|「休日の防災講演(単発・謝礼あり)」を63条型で申請する場合の骨子

様式は所属でもらう前提で、記載欄に流し込む中身の例です。基準①②に1対1で対応させています。

記載の骨子(例)
申請の種別 自衛隊法63条(報酬を受けて営利企業以外の事業を行う)に基づく承認申請
相手先 ○○市自主防災組織連絡会(任意団体)。防衛省・自衛隊との契約・取引関係なし。申請者の職務上の関係なし
内容 地域住民向け防災講演「家庭でできる備え」60分。内容は一般公開されている防災知識の範囲に限り、職務上知り得た情報・部隊の運用に関する事項は扱わない
日時・場所 ○月○日(日)14:00〜15:00、○○市民会館。勤務時間外・休日。移動を含め当日中に完了
報酬 謝礼○円(1回限り・交通費実費別)。団体の規程による標準額で、申請者の職務に基づく上乗せはない
職務への影響 当日および前後に当直・訓練の予定なし。招集・勤務命令があった場合は直ちに従い、講演は中止または延期する(施行規則61条3項)
服務上の配慮 制服・階級・部隊名を告知物に使用しない。個人の立場で登壇する。政治的行為に当たる内容は含まない

62条型(自営・役員)で申請する場合も骨子は同じで、「相手先」が「自分の事業」に置き換わります。その際は事業の規模(取扱額・時間)と、日常業務を誰がどう回すかを具体的に書かないと、基準②(支障なし)の説明が成り立ちません。

書いてはいけないこと・書かないほうがいいこと

  • 曖昧な期間(「当面」「随時」):承認の範囲が決まらず、決裁者が判断できない
  • 報酬の未記載:63条型は報酬が要件なので、額と回数は必須
  • 部隊名・階級を売りにする予定:信用の観点で止まる。個人の経験として語る設計にする
  • 勤務時間内の対応を含む計画:施行規則61条2項の給与減額の話になり、支障も疑われる

承認後の税金|申請とは別の手続き

承認を取って報酬を受け取り始めたら、申告は自分でやることになります。副業の所得は、勤め先の年末調整では処理されません。所得税の確定申告が必要かどうかは金額によりますが、住民税の申告は原則として必要です。どちらの場合も、1年分の収入と経費を自分で集計することになります。帳簿づけと申告書の作成をまとめて行いたい場合は、弥生のクラウド確定申告ソフトのような会計ソフトを使う方法があります(料金・対応範囲は公式サイトでご確認ください)。[PR]

公務員全体の兼業許可の考え方(国家公務員の自営の目安など)は公務員副業特例完全攻略、自衛隊員向けの全体像は自衛隊員の副業2026完全ガイドをどうぞ。


よくある質問

Q1. 申請書の様式はどこで手に入る?

所属の人事担当からもらいます。施行規則65条で、申請手続の細目は防衛大臣が定めるとされており、法令の条文には様式が載っていません。ネット上のひな形は参考程度に。

Q2. 無報酬なら申請はいらない?

63条型(報酬を受けて他の職・事業)は報酬が条件なので、無報酬なら対象外です。ただし62条型(役員・顧問の地位に就く)は報酬の有無を問わず承認が要ります。

Q3. 承認されるまでどのくらいかかる?

決裁ルートと案件の性質によって異なります。人事担当に目安を聞き、承認前に活動を始めないことだけ守ってください。

Q4. 勤務時間内に副業の連絡をしてもいい?

承認の範囲を勤務時間外に限定して申請しているなら、勤務時間内の対応はその範囲外です。休憩時間・勤務外に限ります。

Q5. 承認を取ったあと、部隊が変わったら?

異動で職務が変われば、基準①(利害関係)の前提が変わります。異動先の人事担当に承認の控えを見せて、継続してよいか確認してください。


まとめ|申請書は「利害なし・支障なし」を証明する文書

自衛官の副業申請は、自衛隊法施行規則61条の2つの基準——利害関係がないこと、職務に支障がないこと——に答える文書を、所属の人事担当から得た様式で、上司経由で出すだけです。通りやすい類型は「防衛省と無関係な相手先」「休日・勤務時間外」「呼ばれたら止められる」の3つがそろうもの。承認前に始めない、承認の範囲を超えたら再申請、勤務命令は最優先。この順番を守れば、副業は処分のリスクではなく、退職後に効いてくる資産になります。


参考にしている主な一次情報:自衛隊法(昭和29年法律第165号)第62条・第63条/自衛隊法施行規則(昭和29年総理府令第40号)第61条・第63条〜第65条(いずれもe-Gov法令検索)/国税庁「給与所得者で確定申告が必要な人」。

※情報は執筆時点のもので、申請の様式・決裁ルートは所属によって異なります。実際に動く前に、所属の人事担当にご確認ください。

タイトルとURLをコピーしました