公務員の副業の許可は「取ったら終わり」ではありません。多くの自治体で許可には期間(年度末まで・1年間)があり、更新の申請が要ります。さらに、許可の内容(従事先・内容・時間・報酬)が変わったら変更の届出・再申請、やめたら終了の届出。ここを放置すると、「許可は取ったのに、許可の範囲外で副業をしていた」=無許可と同じ評価になります。この記事は、地方公務員法38条と各自治体の許可の運用を根拠に、副業許可の「期間と更新」「変更が要る場面」「実績の報告」「終了」「許可の範囲を超えたとき」を整理します。最初の申請は公務員の兼業許可申請の書き方へ。
結論:許可は期間つき。年度末に更新、内容が変わったら変更、やめたら終了届。「許可の範囲内か」を年に1回自分で点検する
| 場面 | 手続 | 放置すると |
|---|---|---|
| 許可の期間が切れる(年度末・1年) | 更新の申請(実績を添えて) | 期間経過後の副業は無許可 |
| 従事先が変わった・増えた | 変更の届出または新たな許可申請 | 新しい従事先の分は無許可 |
| 内容が変わった(執筆→講演、単発→継続) | 変更の届出または再申請 | 許可の範囲外 |
| 時間・報酬が見込みを大きく超えた | 報告・変更の届出 | 「職務に支障がない」の前提が崩れる |
| 副業をやめた | 終了の届出 | 実害は小さいが、次の申請で「前回の終了が未報告」になる |
| 異動・昇任で職務が変わった | 利害関係の再確認。自治体によっては再申請 | 新しい職務との利害関係が未審査 |
線①:許可には「期間」がある
地方公務員法38条は許可の期間を定めていませんが、自治体の要綱の多くが許可に期間を付けています(「当該年度末まで」「許可の日から1年」など)。理由は、職務の状況・利害関係・本人の勤務実績が変わるので、定期的に見直すためです。期間が切れたまま副業を続ければ、形式上は無許可の状態。許可書に書かれた期間を確認し、更新の申請時期(多くは期間満了の1〜2か月前)を自分のカレンダーに入れておくのが出発点です。
線②:更新の申請——実績を書く
更新の申請書は、初回の申請書に「前年度の実績」を加えた形が一般的です。
- 実績:前期間の従事回数・時間・報酬の実額(支払調書・源泉徴収票の額)
- 見込みとの差:初回の見込みより大きく超えていれば、その理由と、次期間の見込みの修正
- 職務への支障がなかったこと:勤務実績(欠勤・遅刻なし)、所属長の意見
- 利害関係の再確認:従事先が自治体の取引先・許認可の相手方になっていないか
- 次期間の計画:内容・時間・報酬の見込み
実績が見込みの範囲内で職務に支障がなければ、更新は初回より通りやすいのが通常です。逆に、見込みを大きく超えた報酬を「報告せずに」更新の申請書で初めて出すと、「なぜ途中で報告しなかったか」を問われます。
線③:変更が要る場面——「同じ許可の範囲内か」で判断
許可は「従事先・内容・時間・報酬」の組み合わせに対して出ています。どれかが変われば、許可の範囲を出ます。
| 変化 | 許可の範囲内か | 手続 |
|---|---|---|
| 同じ出版社から2本目の執筆依頼 | 従事先・内容が同じなら範囲内が多い | 回数の増加が見込みを超えるなら報告 |
| 別の出版社・メディアから執筆依頼 | 従事先が違う=範囲外(「執筆全般」で包括許可を受けている場合を除く) | 変更の届出または新たな申請 |
| 執筆の許可で講演を頼まれた | 内容が違う=範囲外 | 新たな申請 |
| 月5時間の許可で月15時間になった | 時間が大きく超過 | 報告・変更の届出 |
| 報酬が見込みの2倍になった | 報酬が大きく超過 | 報告・変更の届出 |
| 従事先が自治体の取引先になった | 利害関係が発生 | 直ちに報告。副業の停止が求められることも |
「執筆・講演全般について、年間○時間・○円まで」のような包括的な許可を出す自治体もあり、その場合は個別の従事先の変更は報告で足ります。自分の許可が個別か包括かを許可書で確認してください。分からなければ人事に聞けば一言で答えが返ります。
1年のカレンダー|許可の手続と税の手続を並べる
| 時期 | 許可の手続 | 税の手続 |
|---|---|---|
| 4月 | 新年度の許可期間の開始。異動があれば利害関係の確認 | — |
| 6月 | — | 住民税の決定通知(許可済みなら伝わっても問題なし) |
| 9〜10月 | 実績の中間点検。見込みを超えそうなら報告 | 副業所得の見積(年末調整の基礎控除申告書に反映) |
| 1月 | 更新申請の準備(期間が年度末なら)。支払調書の額を実績に | 確定申告の準備 |
| 2〜3月 | 更新の申請(期間満了の1〜2か月前) | 確定申告(2/16〜3/15) |
| 3月末 | 許可期間の満了。更新が通っていなければ4月1日から従事しない | — |
更新の申請書に書く「実績」と、確定申告に書く「所得」は同じ数字(支払調書・源泉徴収票)から作るので、1月にまとめて集計すると両方が一度に済みます。
線④:異動・昇任——利害関係が変わる
許可は申請時の職務を前提に「利害関係がない」と判断されています。異動で契約・許認可・指導を担当する部署に移れば、同じ従事先でも利害関係が生じることがあります(例:出版社からの執筆の許可→出版物の選定を担当する部署に異動)。異動時に「現在の副業の従事先と新しい職務の関係」を人事に確認し、必要なら再申請。自治体によっては異動時の再申請を要綱で定めています。
線⑤:終了の届出——次の申請のために
副業をやめたときは、終了の届出を出します。出さなくても実害は小さいように見えますが、次に別の副業を申請するとき、人事の記録では前の許可が「継続中」のまま残り、「前の副業はどうなったのか」から話が始まります。終了の届出は1枚で済むので、やめた時点で出しておきます。許可の期間内に終了した場合も同じです。
許可の範囲を超えていたと気づいたとき
- 直ちに人事に申し出る:「許可の範囲を超えて従事していた」と自分から報告。発覚前の自主申告は処分を軽くする要素
- 超過の内容を整理:従事先・内容・時間・報酬の実績と、許可との差
- 変更の申請:今後も続けるなら、実態に合わせた内容で申請し直す
- 超過分の扱い:自治体の判断。注意にとどまることもあれば、無許可部分として処分の対象になることもある。超過の期間が短く、自主申告で、報酬が少額なら軽く扱われやすい
「許可は取っている」は、範囲内で従事している限りで有効です。範囲を超えた部分は無許可と同じ評価になるので、年に1回は許可書と実績を突き合わせてください。
年1回の自己点検|5項目
- 許可書の期間は切れていないか。更新の申請時期はいつか
- 従事先は許可書のとおりか。増えていないか
- 内容(執筆・講演・制作など)は許可書のとおりか
- 時間・報酬は見込みの範囲内か。支払調書・源泉徴収票の額と比べる
- 異動・昇任で職務が変わり、利害関係が生じていないか
副業の実績(報酬・時間)の記録は、更新の申請と確定申告の両方に使います。帳簿と申告書を一か所で済ませたい場合は、弥生のクラウド確定申告ソフトのような会計ソフトを使う方法があります(料金・対応範囲は公式サイトでご確認ください)。[PR]
許可の範囲を「広げる」申請の仕方
副業が育って従事先・時間が増えるなら、都度の変更届より、更新時に「執筆・講演全般・年間○時間・○円まで」の包括的な許可を申請する方法があります。実績(前期間に問題なく従事したこと)を示せば、包括化が認められる自治体もあります。案件の相場から次期間の見込みを立てるには、ランサーズのようなクラウドソーシングの募集と自分の実績を突き合わせると現実的な数字になります(受注は許可の範囲内で)。[PR]
よくある質問
Q1. 許可の期間が切れていたことに今気づいた
直ちに更新(再申請)を出し、期間経過後に従事した分があれば自主的に報告してください。発覚前の申告は処分を軽くします。
Q2. 同じ出版社から継続的に依頼が来る。毎回申請が要る?
従事先・内容が同じなら、初回の許可の範囲内として扱う自治体が多い。回数・報酬が見込みを超えるなら報告。包括的な許可に切り替える方法もあります。
Q3. 報酬が見込みの1.5倍になった。報告は要る?
「大きく超えた」の線は自治体によりますが、1.5倍なら報告しておくのが安全です。更新時に初めて出すより、途中で報告するほうが印象は良くなります。
Q4. 異動したら副業を止められた
新しい職務との利害関係が理由なら、従事先を変えるか、利害関係のない形に組み替えて再申請します。異動のたびに確認する前提で設計してください。
Q5. 許可書をなくした
人事に写しを請求してください。許可の内容(期間・従事先・条件)を自分で把握していないこと自体が、範囲超過の原因になります。写しは副業の記録と一緒に保存します。
Q6. 教員・自衛官も同じ?
教員は教特法17条の承認にも期間・変更の運用があり、自衛官は自衛隊法62条・63条の承認に同様の仕組みがあります。考え方は同じです。
まとめ|許可は「期間つき・範囲つき」。更新・変更・終了の3つの手続と、年1回の点検で「許可の範囲内」を保つ
公務員の副業許可は、期間(年度末・1年)と範囲(従事先・内容・時間・報酬)が決まっており、期間が切れれば更新、範囲が変われば変更の届出・再申請、やめれば終了届。異動で利害関係が変われば再確認。範囲を超えた部分は無許可と同じ評価になるので、年に1回、許可書と実績(支払調書・源泉徴収票)を突き合わせる。副業が育ったら包括的な許可への切り替えも選択肢です。最初の申請は公務員の兼業許可申請の書き方、公務員全体は公務員の副業ガイドをどうぞ。
参考にしている主な一次情報:地方公務員法(昭和25年法律第261号)第29条・第33条・第38条/国家公務員法 第103条・第104条/人事院規則一四―八/教育公務員特例法 第17条/自衛隊法 第62条・第63条(いずれもe-Gov法令検索)/各自治体「営利企業等の従事制限に関する要綱」。
※情報は執筆時点のもので、許可の期間・更新・変更・終了の手続、包括的な許可の可否は自治体ごとに異なります。実際に動く前に、所属の人事担当にご確認ください。

