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勤務医の副業はどこまでOK?公立は地公法38条・法人は兼業規程、全員に労働時間の通算(上限960時間)と刑法134条の線引き2026

キャリア・横断
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勤務医の副業は「バイト当直が当たり前」という慣行のせいで、ルールの話が飛ばされがちです。実際には、勤め先の身分で根拠が変わり、そのうえで医師全員にかかる線が3本あります。公立病院の医師は地方公務員なので地方公務員法38条の許可制、国立大学法人・国立病院機構・民間病院の医師は法人の兼業規程・就業規則。全員に共通するのが、労働基準法38条の労働時間の通算(2024年4月から医師にも適用された時間外労働の上限規制と直結)、刑法134条の秘密漏示罪、そして医師法上の責任です。この記事はこの線で「どこまでOKか」「何が処分・刑事責任になるか」を仕分けます。ジャンルや収入の話は医師の副業完全ガイドに譲ります。


結論:医師の副業の線は「身分で1本」+「全員共通で3本」

誰にかかるか 根拠 中身
①許可制 自治体立病院の医師(地方公務員) 地方公務員法38条1項 任命権者の許可なく、営利企業の役員・自営・報酬を得て事業や事務に従事してはならない。違反は29条の懲戒(戒告・減給・停職・免職)
②兼業規程・就業規則 国立大学法人・国立病院機構・日赤・済生会・民間病院などの医師 各法人の規程 届出制・許可制が多い。医師は外勤(バイト)を前提に運用している法人が多いが、規程の手続きを踏むことが条件
③労働時間の通算 雇われて働く副業(当直・外来バイト)をする全員 労働基準法38条1項 事業場が違っても労働時間は通算。2024年4月以降、医師の時間外労働の上限(原則年960時間・特例で年1,860時間)は副業・兼業先の時間も含めて管理される
④秘密漏示罪 医師全員(退職後も) 刑法134条1項 正当な理由なく業務上知り得た人の秘密を漏らすと6月以下の拘禁刑または10万円以下の罰金。医師でなくなった後も同じ
⑤医師としての責任 医師全員 医師法・医療法(広告規制)など オンライン相談・監修・発信でも医師としての注意義務・広告規制はかかる

医師の副業で特徴的なのは③です。バイト当直は「副業」ではなく「通算される労働時間」として本業側に管理義務がある——これが2024年以降の前提です。


線①:公立病院の医師は地方公務員=許可制

都道府県立・市立などの自治体立病院に勤める医師は地方公務員です。地方公務員法38条1項は、任命権者の許可を受けなければ「営利企業の役員を兼ねる」「自ら営利企業を営む」「報酬を得ていかなる事業若しくは事務にも従事」してはならないと定めています。外勤の当直も、製薬企業の講演も、記事監修も、報酬が出る限り原則として許可の対象です。

実務上、自治体病院は地域医療の都合もあって医師の兼業許可を比較的広く運用していますが、それは「許可を取っている」から成り立つ話です。許可の基準は38条2項により人事委員会規則などで定められ、職務との利害関係・職務への支障・信用の3点で審査されます。製薬・医療機器メーカーからの報酬は「利害関係」で最も慎重に見られる類型なので、講演・顧問の類は必ず事前に人事担当へ。公務員全体の考え方は公務員の副業ガイドにまとめています。


線②:法人勤務の医師は兼業規程・就業規則

国立大学法人の附属病院、国立病院機構、日赤・済生会・厚生連、民間の医療法人などに勤める医師には38条はかかりません。代わりに法人の兼業規程・就業規則が線です。

  • 届出制・許可制:外勤は届出か許可を前提に認める法人が多い。無届の外勤は、慣行があっても規程違反
  • 審査の観点:公立とほぼ同じ(支障・信用・利害)。加えて労働時間の通算管理のために、外勤先・曜日・時間を申告させる法人が増えている
  • 禁止規定がある場合:勤務時間外の私生活への制約は限定的に解釈されるのが一般的な考え方だが、本務への支障・信用・競業に当たれば懲戒の対象

大学病院の医師に特有なのは、研究・治験・産学連携の利益相反(COI)管理が兼業と別枠で存在することです。企業からの報酬・株式・顧問料は、兼業の届出とは別にCOIの申告対象になります。


線③:労働時間の通算——「バイト当直」が本業の上限に乗る

労働基準法38条1項は「労働時間は、事業場を異にする場合においても、労働時間に関する規定の適用については通算する」と定めています。2024年4月から医師にも時間外労働の上限規制が適用され、原則は年960時間(A水準)、地域医療確保や技能向上のための特例で年1,860時間(B・連携B・C水準)が上限です。この上限は副業・兼業先での労働時間を通算して見ます。

効いてくる場面は3つです。

  1. 本業側の管理義務:病院は医師の副業・兼業先の労働時間を把握し、通算で上限と追加的健康確保措置(連続勤務時間制限・勤務間インターバル)を管理しなければならない。だから外勤の届出を厳しくする
  2. 割増賃金:通算して法定時間を超える部分は時間外労働。後から契約した側(通常は外勤先)が割増を負担する整理が一般的
  3. 上限超過のリスク:本業で上限近くまで働いている医師が外勤を重ねると、通算で上限を超える。本業側が外勤を制限するのはこの理由

この構造のため、雇われる副業(当直・外来バイト)は通算の対象で重く雇われない副業(記事監修、執筆、講演、オンライン相談の業務委託)は通算の対象外で軽い、という違いが出ます。収入は前者が大きいですが、上限と健康の面では後者が続けやすい形です。


線④:秘密漏示罪——副業で刑事責任になるのはここ

刑法134条1項は、医師・薬剤師・助産師などが「正当な理由がないのに、その業務上取り扱ったことについて知り得た人の秘密を漏らしたときは、6月以下の拘禁刑又は10万円以下の罰金」と定め、その職にあった者(退職後)も同様としています。勤務先の処分とは別の、刑事責任です。

副業で危ないのは、悪意の漏洩ではなく「症例」として書いてしまうことです。

  • 記事・SNS・講演で、患者が特定できる情報(疾患+時期+地域+年齢+経過の組み合わせ、画像)を出す
  • 「当院では〜」と内部の運用や特定の患者対応を書く
  • オンライン相談の副業で、本業の患者の情報を使って答える

医療の経験を書く・話すときは、個別症例ではなく一般化した医学知識として扱うこと、勤務先と患者を特定させないことが最低ラインです。学会発表の症例報告が患者同意・匿名化を前提にしているのと同じ規律が、副業の発信にもかかります。


線⑤:医師としての責任——オンライン相談・監修・発信

  • オンライン健康相談:診断・処方に踏み込めば医療行為。相談サービスの副業は「一般的な情報提供」の範囲で設計されているか、医療行為なら医療機関として行う形になっているかを確認する
  • 記事監修:監修者として名前が出る以上、内容の誤りは医師の責任になる。監修料の多寡より、内容に手を入れられる契約かどうかが重要
  • SNS・発信:医療広告ガイドラインは医療機関の広告に適用されるが、勤務先や自費診療への誘導を含む発信は広告と見なされうる。肩書を出すなら勤務先への誘導を避ける

仕分け表|医師の副業を5本の線で見る

副業 ①公立 ②法人 ③時間通算 ④秘密 見立て
他院での当直・外来(雇用) 許可の対象。地域医療目的なら通りやすい 届出・許可が前提 通算される(上限に直結) ○ 収入は大きいが上限管理が必須
記事監修・医療ライティング(業務委託) 許可の対象だが通りやすい類型 届出で済むことが多い 対象外 症例を書かない ◎ 上限・健康の面で最も続けやすい
製薬・機器メーカーの講演・顧問 利害関係で最も慎重に審査 兼業+COI申告 対象外(委託) △ 手続きが二重。報酬の公開対象にもなる
産業医(嘱託) 許可の対象。通りやすい 届出・許可 雇用形態による 従業員の健康情報の守秘
オンライン健康相談(業務委託) 許可の対象 届出・許可 対象外 本業の患者情報を使わない ○ 医療行為との線引きが別途必要
自分でクリニック・会社を営む 「営利企業を営む」で最も厳しい 競業・利害で止まりやすい ✕ 在職中は現実的でない
資産運用・小規模な不動産賃貸 事業・事務ではない(規模による) 通常は対象外 対象外 ◎ 公立は規模の目安を規則で確認

処分・トラブルになる形|4つの典型

  1. 無届・無許可の外勤:①②の違反。住民税の額の差と、通算管理の聞き取りで発覚する
  2. 通算で上限超過:③の問題。本業側の管理責任にも関わるため、外勤が止められる
  3. 症例が特定できる発信:④の刑事責任。副業の可否以前の問題
  4. 企業報酬の未申告(COI):兼業規程とは別枠の違反。研究・発表の信頼に直結する

線の内側で始めるなら|医師向けの順番

  1. 兼業規程・就業規則(または自治体の規則)の手続きを確認し、外勤を含めて全部届け出る。通算管理のため、曜日・時間・勤務先を正確に
  2. 上限と健康を先に計算する。本業の時間外+外勤で年960時間(または特例水準)に収まるか
  3. 雇われない型を足す。記事監修・執筆・講演は通算の対象外で、収入の分散にもなる
  4. 症例・勤務先・患者が出ない設計にする。経験は「一般化した医学知識」として書く

記事監修・医療ライティングの案件は、クラウドソーシングに「医師監修」の募集があります。相場と条件を眺めるだけなら許可も費用も要らないので、ランサーズのようなプラットフォームに登録しておくと、届出・許可申請の「内容・報酬」欄を具体的に書けます(受注した時点で届出・許可の対象になるので、受けるのは手続き後に)。[PR]


税金|外勤は「給与」、監修・講演は「報酬」

外勤の当直・外来は雇用なので「給与」です。本業と合わせて2か所給与になり、年末調整されない側の給与収入と他の所得の合計が20万円を超えれば所得税の確定申告が必要です。監修・講演・執筆は「報酬」で、源泉徴収されたうえで雑所得(規模によっては事業所得)になります。複数の外勤先と業務委託が混ざる医師は、ほぼ確実に確定申告が必要になります。

副業の所得は、勤め先の年末調整では処理されません。1年分の収入と経費(学会費、書籍、交通費など)を自分で集計することになります。帳簿づけと申告書の作成をまとめて行いたい場合は、弥生のクラウド確定申告ソフトのような会計ソフトを使う方法があります(料金・対応範囲は公式サイトでご確認ください)。[PR]


よくある質問

Q1. 当直バイトは「副業」に当たるの?

当たります。公立なら許可、法人なら規程の手続きが要り、労働時間は本業と通算されます。「医師は外勤が当たり前」という慣行は、手続きを免除する根拠にはなりません。

Q2. 研修医(専攻医)は副業できる?

臨床研修中の医師は、研修に専念する義務との関係で外勤を制限する病院が多く、法人の規程で禁止されていることもあります。所属のプログラムの規程を確認してください。

Q3. 製薬企業の講演料は申告が要る?

兼業の届出・許可に加えて、大学や学会の利益相反(COI)申告の対象になります。企業側も支払いを公開する仕組みがあるため、未申告は発覚しやすい類型です。

Q4. 匿名で医療系のSNSを運営して収益化するのは?

収益が出る時点で副業規定の対象です。匿名でも、症例が特定できる投稿は刑法134条の問題になり、勤務先への誘導は広告規制の問題になります。

Q5. 退職して常勤をやめれば自由?

兼業規程はなくなりますが、労働時間の通算(掛け持ちの合計)と秘密漏示罪(退職後も)は残ります。複数の非常勤を掛け持ちする医師ほど、合計時間の自己管理が必要です。


まとめ|「手続き・上限・秘密」の3つを先に押さえる

医師の副業は、公立なら地方公務員法38条の許可、法人なら兼業規程——ここで「できるか」が決まります。そのうえで、労基法38条の通算と医師の時間外上限が「雇われる副業」の量を決め、刑法134条が「症例を書く副業」を刑事責任の領域に置きます。外勤は全部届け出て上限の中に収め、雇われない型(監修・執筆・講演)で収入を分散し、症例・勤務先・患者が出ない設計にする——これが医師の副業の線の内側です。


参考にしている主な一次情報:地方公務員法(昭和25年法律第261号)第29条・第38条/労働基準法(昭和22年法律第49号)第38条/刑法(明治40年法律第45号)第134条(いずれもe-Gov法令検索)/厚生労働省「医師の働き方改革」(時間外労働の上限規制・2024年4月施行)/国税庁「給与所得者で確定申告が必要な人」。

※情報は執筆時点のもので、兼業の運用は勤務先・自治体ごとに異なります。実際に動く前に、所属の人事担当にご確認ください。

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