教員が教特法17条の兼職・兼業の承認(または地公法38条の許可)を申請して、「認められない」と返ってきたとき、多くの人はそこで諦めます。しかし不承認には理由があり、理由が分かれば形を変えて再申請できるものが大半です。不承認の典型は「本務に支障のおそれ」「勤務校の生徒との関係」「営利企業での就労」「内容が教育に関するものか不明」「報酬・時間が過大」の5つ。この記事は、教育公務員特例法17条1項の要件(「教育に関する」「本務の遂行に支障がない」)と地方公務員法38条の許可基準を根拠に、不承認の理由の読み方と、再申請で直す箇所を整理します。申請書の基本は教員の兼業承認申請の書き方、線引きは教員の副業はどこまでOK?へ。
結論:不承認の理由は5つに集約される。理由ごとに「形を変える」再申請が効く。黙って始めるのが最も悪い
| 不承認の理由(典型) | 教委が見ている要件 | 再申請で直す箇所 |
|---|---|---|
| 本務の遂行に支障のおそれ | 17条1項「本務の遂行に支障がない」 | 時間・頻度を減らす。繁忙期(年度始め・行事・入試)を外す。勤務校の校務分掌との関係を書く |
| 勤務校の生徒・保護者が関わる | 公正・信用(地公法33条)・評定との分離 | 勤務校の生徒を対象から外す。地域を離す |
| 営利企業での就労(塾・スクール) | 17条の「教育に関する事業」か、38条の「営利企業」か | 17条ではなく38条の許可として申請し直す/非営利の主体(教委・NPO・地域クラブ)に変える |
| 内容が「教育に関する」か不明 | 17条1項「教育に関する他の職・事業・事務」 | 内容を教育に結びつけて具体化する。教育に関係なければ38条で申請 |
| 報酬・時間が過大 | 職務が主であること | 報酬の見込みを相当な範囲に。時間の上限を明記 |
線①:17条1項の要件は2つだけ——「教育に関する」「本務に支障がない」
教育公務員特例法17条1項は、教育公務員が「教育に関する他の職を兼ね、又は教育に関する他の事業若しくは事務に従事することが本務の遂行に支障がないと任命権者において認める場合」に、給与を受けて・受けないで、その職を兼ね事業に従事できると定めています。3項により、地公法38条2項の人事委員会の許可基準によらずに判断されます。
つまり、教委が見るのは①内容が「教育に関する」ものか、②本務に支障がないか、の2点。不承認の理由は、この2点のどちらかに引っかかったか、そもそも17条の対象外(営利企業・教育と無関係)として38条の話になったか、のいずれかです。
線②:理由別の直し方
①「本務の遂行に支障のおそれ」
最も多い理由で、最も直しやすい理由です。教委が見るのは、時間の総量・時期・勤務校の負担です。再申請では、
- 月の回数・時間を減らす(「毎週土曜3時間」→「月2回・各2時間」)
- 年度始め・定期考査・行事・入試の時期を避ける旨を明記
- 校務分掌(担任・部活動顧問・進路担当)との両立を校長の副申で裏づける
- 期間を区切る(「今年度末まで」)。実績を作って次年度に広げる
②「勤務校の生徒・保護者が関わる」
塾・家庭教師・地域クラブで勤務校の生徒を教える形は、評定の公正・保護者との私的契約の観点で不承認になりやすい形です。再申請では、勤務校の生徒を対象から外す(他校区・他市町村)、地域クラブなら勤務校の生徒を担当しない配置にする、と書きます。
③「営利企業での就労」
塾・スポーツスクール・音楽教室など営利企業での指導は、教委によっては17条の「教育に関する事業」と認めず、38条の「営利企業への従事」として扱います。この場合、17条で申請したものが不承認になっただけで、38条の許可申請として出し直す道があります。38条の許可も出にくい教委なら、主体を非営利(教育委員会の事業・NPO・総合型地域スポーツクラブ・自治体のスポーツ協会)に変えると17条の枠に戻ります。
④「内容が教育に関するか不明」
「執筆」「講師」とだけ書くと、教委は教育に関するか判断できません。「中学校数学の家庭学習用教材の執筆(出版社名)」「小学校教員向けICT研修の講師(主催者名)」のように、対象・内容・主体を具体化します。教育と無関係な内容(一般のライティング・データ入力)は17条の対象外なので、最初から38条で申請します。
⑤「報酬・時間が過大」
本務より副業が主と見られる規模は不承認になります。報酬の見込みを相場の範囲に、時間を月○時間以内と明記し、「本務の給与が主」であることが数字で分かる形にします。
再申請の例|「土曜の塾講師」が不承認だった場合
| 初回の申請 | 再申請 | |
|---|---|---|
| 主体 | 株式会社○○(学習塾) | ○○市教育委員会の土曜学習支援事業(非営利)/またはNPO法人の学習支援 |
| 対象 | 市内の中学生(勤務校の生徒を含む可能性) | 勤務校の生徒を除く。他校区 |
| 時間 | 毎週土曜 13〜18時 | 月2回・土曜 13〜15時。定期考査前・入試期間は休止 |
| 報酬 | 時給○円・月約4万円 | 謝金 1回○円・月約1万円 |
| 根拠 | 17条で申請→「営利企業での就労」として不承認 | 非営利の教育事業として17条。校長の副申に「校務分掌との両立」を明記 |
営利の塾にこだわるなら、38条の許可として申請し直す道もありますが、17条の枠に戻せる主体があれば、そちらのほうが通りやすいのが通常です。
線③:不承認の理由を「聞く」——書面で
不承認の通知に理由が書かれていない場合、教委の担当に理由を確認してください。口頭で済ませず、「再申請の参考にしたいので、不承認の理由(要件のどこに該当しないか)を教えてほしい」とメールで聞くと、理由が文書に残り、再申請の設計に使えます。理由が「前例がない」「教員はやるべきでない」のような要件と無関係のものなら、17条1項の2要件に照らして再度判断を求める余地があります。
再申請の書き方|「前回との差分」を先頭に
- 前回の申請日・不承認の理由を冒頭に書く
- 変更点を箇条書きで(時間を月8時間→4時間、対象から勤務校の生徒を除外、主体をNPOに変更、期間を年度末まで)
- 要件との対応:「教育に関する」ことの説明、「本務に支障がない」ことの具体的根拠(校務分掌・時期・校長の副申)
- 情報管理:学校の情報・生徒の情報を使わない旨
- 校長の副申:校長に事前に相談し、前回より踏み込んだ副申をもらう
やってはいけないこと
- 不承認のまま始める:無承認の兼業として処分の対象(標準例は減給または戒告)。不承認の記録がある分、「知らなかった」が通らず重くなる(教員の副業はバレる?)
- 家族名義にする:実態が自分の活動なら同じ
- 無報酬にして始める:17条は「給与を受け、又は受けないで」なので、無報酬でも「教育に関する他の職・事業」には承認が要ると読める。無報酬なら自由、とは限らない(教委の運用を確認)
教える経験をそのまま使える副業のひとつが、オンラインの講師です。たとえばよみかきそろばんくらぶのオンライン先生募集は、自宅からZoomでそろばん・よみかきを個別に指導する形で、契約形態は雇用契約でも業務請負契約でもない「講師登録」です(源泉徴収は行われないため、所得額によっては自分で確定申告をすることになります)。月曜〜土曜の7〜21時の中から可能な時間を選べるので、勤務の後や土曜に寄せる組み方ができます。応募には大卒であること・長期(最低3年以上)続けられることといった条件があり、Zoomに必要な機材や回線は自分で用意します。在職中に始める場合は、この記事のとおり先に承認・許可の手続きを済ませてください。条件や募集状況は変わることがあるため、最新の内容は公式サイトでご確認ください。[PR]
承認が出やすい形に「組み替える」選択肢
どうしても承認が出ない形(営利の塾・勤務校の生徒対象)に固執せず、承認が出やすい形に組み替えるのも一つの方法です。教育に関する執筆・教材作成(出版社・教育メディア・クラウドソーシング)は、17条の典型で、在宅・勤務時間外・生徒と無関係、という承認の要件に合わせやすい形です。案件の相場はランサーズのようなクラウドソーシングで「教材 作成」「教育 記事」などと検索すると把握できます(受注は承認の後に)。[PR]
税金|承認が出たら
承認を得た兼業の報酬は、雇用(部活動指導員・非常勤講師)なら給与所得、業務委託(執筆・講師)なら雑所得。給与以外の所得が年20万円を超えれば所得税の確定申告、20万円以下でも住民税の申告が必要です。原稿料・講演料は10.21%の源泉徴収があり、確定申告で精算します。帳簿と申告書を一か所で済ませたい場合は、弥生のクラウド確定申告ソフトのような会計ソフトを使う方法があります(料金・対応範囲は公式サイトでご確認ください)。[PR]
よくある質問
Q1. 再申請は何回までできる?
制限はありません。ただし同じ内容を繰り返しても結果は同じです。理由に対応した変更を入れて出してください。
Q2. 不承認に不服申立てはできる?
兼業の承認は任命権者の裁量が広く、不承認に対する法的な不服申立ての手段は限られます。現実的には理由を聞いて形を変える再申請です。
Q3. 校長は賛成なのに教委で不承認になった
校長の副申は判断材料の一つで、決めるのは任命権者(教委)です。教委の理由を聞き、校長の副申に教委の懸念への回答を盛り込んでもらって再申請します。
Q4. 隣の市では承認されている形なのに
任命権者ごとに運用が違います。他市の例を示すこと自体は参考資料として有効ですが、自分の教委の要件に合わせて書き直すのが先です。
Q5. 県費負担教職員の承認は市町村教委?県教委?
17条1項のかっこ書きにより、県費負担教職員(市町村立小中学校の教員)の承認は市町村教育委員会です。県立学校は都道府県教育委員会。
まとめ|不承認は「終わり」ではなく「理由の通知」。理由に対応して形を変え、再申請する
教員の兼業承認の不承認は、教特法17条1項の2要件(教育に関する・本務に支障がない)のどちらかに引っかかったか、17条の対象外(営利企業・教育と無関係)として38条の話になったかのいずれかです。理由を書面で聞き、時間・対象・主体・内容・報酬のどれを直せばよいかを特定して再申請する。不承認のまま始めるのが最も悪く、組み替え(執筆・教材)も選択肢です。申請書の基本は教員の兼業承認申請の書き方をどうぞ。
参考にしている主な一次情報:教育公務員特例法(昭和24年法律第1号)第17条/地方公務員法(昭和25年法律第261号)第29条・第33条・第34条・第38条(いずれもe-Gov法令検索)/国税庁「給与所得者で確定申告が必要な人」。
※情報は執筆時点のもので、承認の様式・運用・不承認の理由の通知方法は教育委員会ごとに異なります。実際に動く前に、校長と教育委員会の担当にご確認ください。

