教員のSNS・ブログ・YouTubeは、収益化する前に線があります。生徒・保護者・学校の情報(地方公務員法34条)、信用(33条)、勤務時間(35条)、そして「学校で作ったもの」の扱い——これらは無収益の発信にもかかります。その上で収益化すれば、教特法17条の承認(教育に関する内容)か地公法38条の許可(それ以外)の話になります。教員は「授業・生徒・学校」という発信の素材が手元にあるぶん、線を越えやすい職業です。この記事は、地方公務員法33条・34条・35条・38条、教育公務員特例法17条、著作権法15条を根拠に、教員の発信を「無収益でも守る線」「収益化の承認・許可」「書ける・撮れる範囲」「保護者・生徒との関係」で整理します。収益化後の線は教員のYouTube・ブログは副業になる?、教材販売は教員が自作教材をnote・販売サイトで売るのは副業?へ。
- 結論:無収益の発信は副業ではないが、生徒・学校の情報と信用の線は全部かかる。収益化は承認・許可。生徒・保護者・学校が特定できる要素は一切出さない
- 線①:34条——教員の「秘密」は生徒・保護者・学校の内部
- 線②:33条——信用と「学校の見解」
- 線③:35条と「学校で作ったもの」
- 線④:収益化——17条か38条か
- 書ける・撮れる範囲|自己診断
- 投稿前のチェック|5つの問い
- 処分の見立て|SNSが原因の懲戒
- 保護者・生徒との関係——「見つかる」前提で
- 発信を「収入」にするなら——承認が出やすい形から
- 税金|収益化したら
- よくある質問
- まとめ|無収益でも34条・33条・35条・職務著作。収益化は承認か許可。生徒・学校を特定できる要素は出さない
結論:無収益の発信は副業ではないが、生徒・学校の情報と信用の線は全部かかる。収益化は承認・許可。生徒・保護者・学校が特定できる要素は一切出さない
| 発信の段階 | 17条・38条(副業) | 34条・33条・35条・著作権 |
|---|---|---|
| 匿名で教育の一般論・趣味を投稿(無収益) | 対象外 | かかる。生徒・学校が特定できる情報は出さない |
| 「現役教員」と名乗って発信(無収益) | 対象外 | かかる。所属の特定・学校の見解と受け取られる問題が大きくなる |
| 広告・投げ銭・案件で収益化(教育の内容) | 教特法17条の承認(教委の判断)または38条 | 同上 |
| 収益化(教育と無関係の内容) | 38条の許可 | 同上 |
| 授業・行事の動画・写真を投稿 | — | 生徒の肖像・個人情報・学校の管理。原則不可 |
線①:34条——教員の「秘密」は生徒・保護者・学校の内部
34条は職務上知り得た秘密を退職後も含めて漏らしてはならないと定めています。教員が職務上知る秘密は、生徒の成績・評定・進路・健康・家庭環境・指導記録、保護者の事情、同僚の人事、学校の内部(入試・採点・会議の内容)など。SNSで問題になる形は次のとおりです。
- 「今日こんな生徒がいて」——名前を伏せても、学校・学年・時期・特徴で特定できれば同じ
- 保護者とのやり取り・クレームの内容
- 職員会議・人事・同僚の話
- 定期テスト・入試問題・採点基準(公開前のもの)
- 生徒の作品・答案・写真(個人情報・肖像権)
「教育の一般論」と「自分の学校の話」の境目は、読んだ人が学校や生徒を特定できるかです。
線②:33条——信用と「学校の見解」
「現役教員」と名乗って発信すると、個人の意見が学校・教育委員会の見解と受け取られ、保護者・地域からの苦情が学校に届きます。教育政策・学校運営への批判、特定の指導法の推奨、政治的な発信は、匿名でも特定されれば33条(信用失墜)の問題です。所属を出さず、個人の見解であることを明示し、学校の運営に関わる内容は避ける、が線です。
線③:35条と「学校で作ったもの」
- 勤務時間中の投稿・撮影:35条(職務専念義務)。授業中・休憩時間の投稿も勤務時間の扱いを確認
- 授業用に作った教材・スライド・プリント:職務で作った成果物。著作権法15条の職務著作に当たれば学校(設置者)のもので、私的な公開・販売は不可。休日に自分の機材で授業と別に作ったものと分ける
- 学校の設備・備品で撮影:学校の管理の問題。教室・校舎の映り込みも所属の特定につながる
線④:収益化——17条か38条か
教育に関する内容(学習法・教材の解説・教員向けの情報)を収益化する場合、教特法17条の「教育に関する事業」として教委の承認を申請します。教委によっては、YouTube・ブログの収益化を17条ではなく38条の「自ら営利企業を営む」(広告収入を得る事業)として扱うところもあり、扱いは分かれます。教育と無関係の内容(趣味・料理・旅行)は38条の許可。承認・許可の前に収益化(広告オン・投げ銭オン)すれば無承認の兼業です。承認申請の書き方は教員の兼業承認申請の書き方、不承認時は教員の兼業承認が「認められない」と言われたらへ。
書ける・撮れる範囲|自己診断
| 内容 | 判断 |
|---|---|
| 教科の一般的な学習法・解説(自作の例題で) | ○(所属を出さない) |
| 自作の教材(休日・自分の機材・授業と別に作ったもの) | ○(収益化は承認・許可) |
| 教員の働き方の一般論(時間術・教材研究の方法) | ○(学校の内部に触れない) |
| 自分の学校の授業・行事の様子 | ✕(生徒の肖像・学校の特定) |
| 生徒・保護者のエピソード(匿名化) | ✕(特定のリスク・34条) |
| 学校・教委・同僚への不満 | ✕(33条・34条) |
| 教育政策への意見 | △(個人の見解として一般的な範囲。所属を出さない) |
| 授業で使ったプリントの公開 | △(職務著作の問題。自作・私的作成のものに限る) |
投稿前のチェック|5つの問い
- 読んだ人が、学校・学年・クラス・生徒を特定できる要素(地域・行事名・時期・人数・特徴)が入っていないか
- 写真・動画に、校舎・教室・掲示物・制服・生徒の持ち物が写っていないか
- 「学校の見解」と受け取られる書き方になっていないか(個人の見解であることを明示したか)
- 授業のために勤務時間中に作ったものを使っていないか
- 勤務時間中に投稿していないか
5つとも問題なければ、無収益の範囲で投稿できます。収益化するなら、この5つを満たした上で承認・許可を取ってから広告・投げ銭をオンにします。
処分の見立て|SNSが原因の懲戒
| 形 | 根拠 | 見立て |
|---|---|---|
| 生徒の写真・個人情報の投稿 | 34条・個人情報保護 | 減給〜停職。保護者対応を伴い重い |
| 生徒・保護者のエピソードで特定 | 34条・33条 | 戒告〜減給。拡散すれば重くなる |
| 学校・同僚への批判を公に | 33条 | 戒告〜減給 |
| 無承認で収益化 | 17条・38条 | 減給または戒告が標準 |
| 勤務時間中の投稿が常態化 | 35条 | 注意〜戒告 |
保護者・生徒との関係——「見つかる」前提で
教員のSNSは、生徒・保護者に見つかる前提で運用する必要があります。匿名でも、投稿の内容・時間・写真から特定されることが多く、特定された時点で「先生がSNSで○○と書いていた」が学校に届きます。
- 生徒・保護者からのフォロー・DMは、学校のルール(私的な連絡の禁止)に従う。返信しない・ブロックするのが原則
- 生徒が自分のアカウントを見つけた場合、学校に報告する(隠すより先に言う)
- 生徒に見せられない内容は、そもそも投稿しない。「生徒が読む」を投稿前の基準にする
発信を「収入」にするなら——承認が出やすい形から
教育に関する執筆(出版社・教育メディア・クラウドソーシング)は17条の承認の典型で、SNSの収益化より通りやすい形です。発信で実績を作り、執筆の依頼につなげる、という順番が現実的です。案件の相場はランサーズのようなクラウドソーシングで「教育 記事」「教材 作成」などと検索すると把握できます(受注は承認の後に)。[PR]
税金|収益化したら
広告収益・投げ銭・案件報酬は雑所得。機材・ソフト・通信費は経費(按分)。経費を引いた所得が年20万円を超えれば所得税の確定申告、20万円以下でも住民税の申告が必要です。帳簿と申告書を一か所で済ませたい場合は、弥生のクラウド確定申告ソフトのような会計ソフトを使う方法があります(料金・対応範囲は公式サイトでご確認ください)。[PR]
よくある質問
Q1. 匿名なら学校の話を書いてもいい?
匿名でも、内容が生徒・学校を特定できるものなら34条の問題です。投稿の積み重ねで特定されるのが通常で、匿名は守りになりません。
Q2. 無収益の教育系YouTubeで「現役教員」と名乗りたい
17条・38条の対象外ですが、33条(学校の見解と受け取られる)・34条・学校の情報管理の規則はかかります。所属を出さない形が安全で、名乗るなら教委の運用を確認してください。
Q3. 保護者から「先生のSNS見ました」と言われた
投稿内容に問題がなければ問題ありません。校長に報告しておくと、後で話が大きくなったときに対応しやすくなります。
Q4. 投稿が問題になったらどうなる?
34条・33条違反は29条の懲戒(戒告・減給・停職・免職)の対象。生徒の情報の漏えいは重く、保護者対応・学校の信用の問題として扱われます。
Q5. 卒業生のエピソードなら書いてもいい?
34条は退職後も含めて続き、卒業後も「職務上知り得た」情報です。本人が特定できる形は不可。本人の同意があっても、学校の情報管理の観点から校長に確認してください。
Q6. 私立学校の教員は?
地公法・教特法は適用されず、学校法人の就業規則(SNS利用の規定・副業規定)によります。生徒の個人情報・肖像の問題は同じです。
まとめ|無収益でも34条・33条・35条・職務著作。収益化は承認か許可。生徒・学校を特定できる要素は出さない
教員のSNS・発信は、収益化の前に地方公務員法34条(生徒・学校の情報)、33条(信用・学校の見解)、35条(勤務時間)、著作権法15条(学校で作ったもの)がかかり、無収益でも違反すれば懲戒の対象です。収益化は教育に関する内容なら教特法17条の承認(教委によっては38条)、無関係なら38条の許可。生徒・保護者・学校が特定できる要素を出さず、所属を出さず、授業と別に作ったもので発信する——これが教員の発信の線です。収益化後は教員のYouTube・ブログは副業になる?をどうぞ。
参考にしている主な一次情報:地方公務員法(昭和25年法律第261号)第29条・第33条・第34条・第35条・第38条/教育公務員特例法(昭和24年法律第1号)第17条/著作権法(昭和45年法律第48号)第15条/個人情報の保護に関する法律(いずれもe-Gov法令検索)/国税庁「給与所得者で確定申告が必要な人」。
※情報は執筆時点のもので、SNS利用の規則・収益化の扱い(17条か38条か)は教育委員会ごとに異なります。投稿・収益化の前に、校長と教育委員会の担当にご確認ください。

