PR

公立と私立で教員の副業ルールはどう違う?地公法38条・教特法17条と就業規則の合理性(労契法7条・15条)で並べて整理 2026

キャリア・横断
記事内に広告が含まれています。

「教員の副業」と一括りに検索すると、公立の話と私立の話が混ざったまま出てきます。実際には公立は法律(地公法38条・教特法17条)、私立は就業規則と雇用契約で決まり、判断の順番も、破ったときの結果も違います。結論を先に言うと、公立は「許可・承認を取れば適法にできる」制度、私立は「就業規則にどう書いてあるか」で決まり、規則の定めが無効になる場面もあるという違いです。この記事は、地方公務員法38条・教育公務員特例法17条と、労働契約法7条・15条・16条を根拠に、公立と私立の副業ルールを並べて整理します。承認申請の実務は教員の兼業承認申請の書き方、私立に近い会社員の話は就業規則の「副業禁止」はどこまで有効かへ。


結論:公立は「許可を取る制度」、私立は「規則の合理性」で決まる

論点 公立学校の教員 私立学校の教員
根拠 地公法38条・教特法17条 就業規則・雇用契約(労契法7条等)
原則 許可・承認がなければ従事できない 勤務時間外は本来自由。規則で制限する形
手続 任命権者の許可(38条)/兼職承認(17条) 届出制・許可制など学校ごと
違反したとき 懲戒処分の対象(地公法29条) 就業規則の懲戒。ただし処分の相当性が争われる
規則が無効になることは 法律なので無効にならない 合理性を欠く規定・重すぎる処分は無効になり得る(労契法7条・15条・16条)

線①:公立——法律が「許可がなければ従事できない」と定めている

地方公務員法38条1項は、「職員は、任命権者の許可を受けなければ、商業、工業又は金融業その他営利を目的とする私企業……を営むことを目的とする会社その他の団体の役員その他人事委員会規則……で定める地位を兼ね、若しくは自ら営利企業を営み、又は報酬を得ていかなる事業若しくは事務にも従事してはならない」と定めています。

ここで押さえたいのは、対象が「報酬を得ていかなる事業若しくは事務にも」と非常に広いことです。営利企業に限らず、報酬を受け取る形で何かに従事すること全般が、許可の対象になります。そのうえで、教育に関するものについては教育公務員特例法17条1項が、「本務の遂行に支障がないと任命権者において認める場合には、給与を受け、又は受けないで、その職を兼ね、又はその事業若しくは事務に従事することができる」という別の道を用意しています。

つまり公立教員にとって副業は、「やってよいか」ではなく「どちらの条文で、どう申請するか」の問題です。無許可で始めた時点で、内容が健全であっても手続の違反になります。


線②:私立——法律の定めはなく、就業規則が出発点

私立学校の教員は地方公務員ではないので、38条も17条も適用されません。副業を直接禁じる法律もありません。勤務時間外に何をするかは本来その人の自由で、学校が制限するには就業規則や雇用契約に定めを置く必要があります。

ただし、規則に書いてあれば何でも通るわけではありません。労働契約法7条は、就業規則が労働契約の内容になるための要件として「合理的な労働条件が定められている就業規則を労働者に周知させていた場合」を挙げています。周知されていない規則、合理性を欠く規則は、契約内容として効力を持ちません。

さらに労契法15条は懲戒について、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は権利濫用として無効と定めています。16条は解雇について同じ趣旨を定めています。つまり私立では、「規則に副業禁止と書いてある」ことと「その副業を理由に処分できる」ことは別で、実際の判断は、本業への支障・競業性・信用への影響といった具体的な事情で決まります。


線③:同じ副業でも扱いが変わる例

副業の内容 公立の扱い 私立の扱い
近所の塾で週2回教える 報酬を得る従事=38条の許可(教育に関するとして17条で扱う自治体も) 就業規則の定めによる。競業性が問題になりやすい
教育系の記事を書いて原稿料を得る 報酬があるので許可の対象 規則の定めによる。学校名を出さなければ支障は小さい
実家の農業を無報酬で手伝う 報酬がなければ38条の「報酬を得て」に当たらない 問題になりにくい
不動産の賃貸(相続した物件) 規模によっては「自ら営利企業を営む」に当たり許可が要る 規則の定めによる。資産運用として扱われることが多い
オンラインで英会話を教える 許可・承認が必要(詳細) 規則の定めによる

表のとおり、公立は「報酬があるか」が最初の分かれ目になり、私立は「規則にどう書いてあるか」と「学校の利益とぶつかるか」が中心になります。私立で問題になりやすいのは、近隣の塾で教えるような競業の形です。生徒の取り合いになる、勤務先の指導内容を持ち出す、といった事情があると、規則の合理性が認められやすくなります。


非常勤・任用形態で変わる部分

公立の中でも、任用形態で扱いが分かれます。教特法17条2項は「前項の規定は、非常勤の講師(地方公務員法第二十二条の四第一項に規定する短時間勤務の職を占める者及び同法第二十二条の二第一項第二号に掲げる者を除く。)については、適用しない」と定め、地公法38条1項のただし書も「非常勤職員(短時間勤務の職を占める職員及び第二十二条の二第一項第二号に掲げる職員を除く。)については、この限りでない」としています。

結果として、パートタイムの非常勤講師は、17条の承認も38条の許可も要らないという整理になります。フルタイムの会計年度任用職員や、短時間勤務の職を占める職員は除かれているので、自分の任用がどれかを辞令で確認してください。詳しくは非常勤講師の副業で扱っています。


私立で始める前に確認する5点

  1. 就業規則の副業の条項を読む(禁止か、許可制か、届出制か)
  2. その規則が周知されているか(見られる場所にあるか。労契法7条の要件)
  3. 手続がある場合は先に出す(届出制なら出すだけで足りる)
  4. 競業に当たらないか(同じ地域の塾・同じ学年の指導は慎重に)
  5. 学校名・生徒の情報を出さない(就業規則以前に、信用と守秘の問題)

就業規則に「許可を得ること」と書かれていて、申請しても理由なく不許可にされる場合、その運用が合理的かどうかは争いになり得ます。ただし現実には、争う前に関係が壊れるほうが痛いので、まずは支障がない形に設計して出すのが現実的です。


公立で始める前に確認する5点

  1. 報酬があるかを確認する(あれば38条の対象)
  2. 教育に関する内容かを確認する(17条で扱える可能性がある)
  3. どちらの様式で出すかを人事担当に聞く(自治体で運用が違う)
  4. 従事する日・時間の上限を自分で決めて書く(「本務に支障がない」の材料)
  5. 勤務校の生徒を対象にしない(利害と信用の問題)

オンラインで教える仕事は、雇用契約ではなく「講師登録」という形をとるところもあります。たとえばよみかきそろばんくらぶのオンライン先生募集は、自宅からZoomで個別に指導する形で、雇用契約でも業務請負契約でもない講師登録という契約形態です(源泉徴収は行われないため、所得額によっては自分で確定申告をすることになります)。公立でも私立でも、勤務校の生徒と重ならない形を選べるかは確認しておきたい点です。月曜〜土曜の7〜21時の中から可能な時間を選ぶ形で、応募には大卒であること・長期(最低3年以上)続けられることといった条件があり、Zoomに必要な機材や回線は自分で用意します。在職中の方は、契約の形にかかわらず先に承認・許可・届出の手続きを済ませてください。条件や募集状況は変わることがあるため、最新の内容は公式サイトでご確認ください。[PR]


違反したときに起きること

公立は、地方公務員法29条の懲戒(戒告・減給・停職・免職)の対象になります。無許可の従事が続いていた、報酬額が大きい、本務に支障が出ていた、といった事情で重くなります。手続を取らずに始めた点そのものが問題にされるので、「内容が健全だった」は言い訳になりません。

私立は、就業規則に基づく懲戒です。ただし労契法15条により、客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当でない懲戒は無効とされます。実際には、本業への支障の有無・競業性・信用毀損の程度が判断材料になり、単に「副業をした」だけで重い処分にするのは難しいと考えられています。とはいえ、無届で始めて後から発覚する形は、事実関係の説明から始まるので不利になります。


税金|公立も私立も同じ

ここは違いがありません。副業の所得は、雇用なら給与所得、業務委託・講師登録なら雑所得または事業所得です。本業の年末調整では副業分は精算されないので、翌年の確定申告で合算します。副業の所得が年20万円以下で確定申告をしない場合でも、住民税の申告は必要です。住民税の徴収方法(普通徴収)を選ぶ欄は確定申告書の第二表にあります。


よくある質問

Q1. 私立なら副業は自由ですか?

法律の禁止はありませんが、就業規則で制限されていればそれに従う必要があります。規則が周知され、合理的な内容であれば契約内容になります(労契法7条)。

Q2. 私立の就業規則に「副業禁止」とあるが、無報酬のボランティアもだめですか?

規則の文言によります。「報酬を得る業務」と限定されている場合が多いので、まず条文を読んでください。判断に迷うなら、届出だけしておくと後の説明が楽になります。

Q3. 公立から私立に移ったら、前の許可はどうなりますか?

公務員でなくなるので38条・17条は外れ、移った先の就業規則が適用されます。改めて届出・許可が必要かを確認してください。

Q4. 公立の非常勤講師は本当に許可が要らないのですか?

パートタイムの非常勤講師であれば、教特法17条2項と地公法38条1項ただし書により、承認も許可も不要という整理になります。ただし短時間勤務の職を占める職員などは除かれるので、辞令で任用形態を確認してください。自治体が届出要綱を設けていることもあります。

Q5. 私立で許可を求めたら不許可になりました。

不許可の理由が本業への支障や競業なら合理的と判断されやすく、理由がはっきりしない場合は運用の合理性が問題になり得ます。まずは支障がない形(時間帯・対象・地域)に設計し直して再度相談するのが現実的です。

Q6. 公立で「教育に関する」かどうかの線はどこですか?

条文は「教育に関する他の職」「教育に関する他の事業若しくは事務」としか定めておらず、具体的な線は自治体の運用によります。塾・家庭教師・教材執筆は教育に関するものとして扱われやすい一方、営利企業からの報酬なので38条でも扱われ得ます。

Q7. 副業がバレる経路は公立と私立で違いますか?

住民税の通知、社会保険の加入、本人の発信という経路は同じです。公立は手続違反そのものが問題になるぶん、発覚したときの扱いが重くなります。


まとめ|公立は「手続」、私立は「合理性」

公立教員の副業は、地公法38条が「報酬を得ていかなる事業若しくは事務にも」従事することを許可の対象とし、教育に関するものは教特法17条で「本務に支障がないと認める場合」に承認される制度です。どちらの様式で出すかは自治体の運用なので、先に人事担当に確認してください。私立教員には法律の禁止がなく、就業規則が出発点になりますが、周知と合理性がなければ契約内容にならず(労契法7条)、懲戒も合理的で相当でなければ無効になり得ます(労契法15条)。公立は手続を取れば道が開き、私立は支障と競業を避ける形にできるかが鍵、というのが実務上の違いです。


参考にしている主な一次情報:地方公務員法(昭和25年法律第261号)第29条・第34条・第38条/教育公務員特例法(昭和24年法律第1号)第17条/労働契約法(平成19年法律第128号)第7条・第15条・第16条。条文はe-Gov法令検索で確認しています。

※情報は執筆時点のものです。許可・承認の運用と様式は自治体ごとに、就業規則の内容は学校ごとに異なります。手続の前に所属の人事担当にご確認ください。

タイトルとURLをコピーしました