警察官の「投資」は、他の公務員より一段慎重に見られます。株式・投資信託・NISAは地方公務員法38条の「営利企業を営む」に当たらず許可不要——ここは他の公務員と同じです。違うのは、FX・暗号資産の高レバレッジ取引が「信用失墜」(33条)や借金の問題として警察内部で重く見られること、不動産投資の営業トークで「警察官は審査が通りやすい」と狙われること、そして職務で知った情報(捜査・取締り)を投資に使えば34条・インサイダーの問題になることです。この記事は、地方公務員法33条・34条・38条、金融商品取引法のインサイダー規制を根拠に、警察官の株・FX・暗号資産・不動産投資の線を整理します。副業全般は警察官の副業は禁止?どこまでOK?、公務員全体の投資は公務員の不動産・株式投資は副業になる?へ。
結論:株・投信・NISAは許可不要。不動産は規模で許可。FX・暗号資産は法律上は可だが「借金・信用」で処分の入口になりやすい。職務の情報を使えば全部アウト
| 投資 | 38条(許可) | 警察官として特に注意する点 |
|---|---|---|
| 株式・投資信託・NISA・iDeCo | 不要(事業ではない) | 勤務時間中の取引(35条)。職務で知った企業情報の利用(34条・インサイダー) |
| FX・CFD・先物 | 不要 | 高レバレッジの損失→借金→信用失墜・職務への影響。警察内部の「身上把握」で借入状況を申告する運用がある |
| 暗号資産 | 不要(売買のみ) | 同上+マネロン・詐欺案件との距離。取締り側の職員が関わる事業者・銘柄に注意 |
| 不動産賃貸(規模基準内) | 不要または届出 | 「警察官は融資審査が通りやすい」の営業で高額物件を買わされる事例。利害関係(管内の業者) |
| 不動産賃貸(一定規模以上) | 必要(自営) | 管理会社への委託・利害関係なしが条件 |
| 投資の勧誘・紹介で報酬を受ける | 必要(報酬を得て事務に従事)。実質は出ない | 金融商品取引法の無登録営業にもなり得る |
線①:38条——投資は「事業」ではない
地方公務員法38条が許可制にしているのは、営利企業の役員・自営・報酬を得る事業従事の3つです。自分の資産を株式・投資信託・FX・暗号資産で運用することは「事業を営む」ではなく、許可は不要です。不動産賃貸だけは、規模が大きくなると「自ら営利企業を営む」に当たり、自治体の基準(棟数・室数・年間賃料)で許可の要否が決まります。ここまでは他の公務員と同じです。
線②:警察官に特有の3つ
①借金と信用——FX・暗号資産の損失
警察官は、職務の性質上、借金・金銭トラブルが「つけ込まれる材料」「信用失墜」として重く扱われます。多くの都道府県警察が、職員の身上(借入・家族・交友)を把握する運用を持ち、多額の借入や返済困難は監督の対象になります。FX・暗号資産・信用取引で大きな損失を出し、消費者金融や知人から借りる状況になれば、投資そのものではなく「借金を抱えた警察官」として33条(信用失墜)・職務への支障の問題になり、懲戒の入口になります。法律上「FXは禁止」ではありませんが、損失が借金に変わる取引は警察官には向かない、が実務の線です。
②職務の情報——34条とインサイダー
捜査・取締り・相談の職務で、特定の企業の不祥事・事件・検査の情報を知ることがあります。その情報を使って株を売買すれば、34条(秘密)の違反であり、金融商品取引法166条(会社関係者の禁止行為)が会社関係者に含める「当該上場会社等に対する法令に基づく権限を有する者が、その権限の行使に関し知ったとき」(1項3号)に当たり得ます。暗号資産の取締り案件で知った情報を使う形も同じです。「職務で知った情報は投資に一切使わない」を原則にします。
③不動産の営業——「警察官は審査が通りやすい」
警察官・公務員は金融機関の融資審査で安定収入と見られ、不動産投資の営業が集中しやすい職業です。「警察官なら区分マンションを複数持てる」「家賃保証で損はしない」と勧められ、規模基準を超える物件を無許可で持って処分される例、家賃保証の見直しで赤字になる例があります。38条の規模基準(自治体に確認)と、管内の業者との利害関係(取締りの相手方になり得る)の両方を見てから判断してください。
線③:勤務時間中の取引——35条
株・FXの取引を勤務時間中にスマホで行えば、35条(職務専念義務)の違反です。警察は勤務時間中の私用の端末操作を情報管理の面でも厳しく見ており、取引アプリの通知を勤務中に確認する程度でも注意の対象になります。取引は勤務時間外に限り、勤務中は通知を切る、が前提です。当直・待機中も勤務時間です。
仕分け表|警察官の投資を「法律」「信用」「情報」の3点で見る
| やりたいこと | 38条 | 33条(信用) | 34条・インサイダー | 見立て |
|---|---|---|---|---|
| つみたてNISA・iDeCo | 不要 | 問題なし | 問題なし | ◎ |
| 個別株の長期保有 | 不要 | 問題なし | 職務で知った企業は避ける | ○ |
| 短期売買・信用取引 | 不要 | 損失→借金で問題化 | 同上 | △ |
| FX(高レバレッジ)・暗号資産の短期売買 | 不要 | 損失→借金で問題化しやすい | 取締り案件との距離 | △〜✕ |
| 転勤で自宅を貸す | 規模内なら不要 | 問題なし | — | ◎ |
| 営業に勧められて区分マンションを複数 | 規模で許可 | 無許可なら処分。赤字→借金で信用 | 管内の業者との利害関係 | △ 許可と試算が先 |
| 投資の勧誘で紹介料を受ける | 必要(出ない) | ✕ | — | ✕ |
処分の見立て|投資そのものではなく「周辺」で処分される
| 形 | 根拠 | 見立て |
|---|---|---|
| FXの損失で多額の借金、返済困難 | 33条(信用失墜)・身上把握の運用 | 監督・指導から、状況によって懲戒。借金を隠して発覚すると重い |
| 勤務中に取引アプリを操作 | 35条(職務専念)・情報管理規程 | 注意〜戒告。繰り返せば重くなる |
| 職務で知った情報で売買 | 34条・金商法166条 | 懲戒免職の可能性+刑事罰(インサイダー) |
| 規模基準超の不動産を無許可で | 38条 | 標準例は減給または戒告。自主申告で軽く |
| 投資の勧誘で紹介料 | 38条・33条・金商法の無登録営業 | 重い |
税金|投資の所得は「副業の20万円」の計算に入る
株式・投資信託の譲渡益・配当は、特定口座(源泉徴収あり)なら申告不要を選べます。NISA・iDeCoは非課税。FX・CFDは申告分離課税(雑所得・税率20.315%)で、年20万円を超えれば確定申告が必要。暗号資産の売買益は総合課税の雑所得で、給与と合算して税率が上がります。不動産賃貸は不動産所得で、経費を引いた所得が20万円を超えれば確定申告。いずれも20万円以下でも住民税の申告は必要です。FX・暗号資産・不動産が混ざる年は、帳簿と申告書を一か所で済ませたい場合に弥生のクラウド確定申告ソフトのような会計ソフトを使う方法があります(料金・対応範囲は公式サイトでご確認ください)。[PR]
投資より先に「許可の出る副業」で収入の柱を作る
投資は元手が要り、損失が借金に変わる形は警察官には向きません。収入の柱を作るなら、許可の出やすい執筆・講演(現職警察官の執筆・講演)で月数万円を作り、その所得をNISA・iDeCoに回す順番が現実的です。執筆の案件の相場はランサーズのようなクラウドソーシングで「防犯 記事」などと検索すると把握できます(受注は許可の後に)。[PR]
よくある質問
Q1. FXは警察官でも禁止ではない?
法律上の禁止はなく、38条の許可も不要です。ただし損失が借金に変わる形は信用失墜・職務への支障として扱われ、多くの県警が借入状況の把握の運用を持っています。レバレッジを抑える・余剰資金に限る・借りてまでやらない、が線です。
Q2. 暗号資産を持っているだけで問題?
保有・売買は問題ありません。取締りの対象になる事業者・銘柄との関係、職務で知った情報の利用、損失による借金が問題です。
Q3. 不動産の営業から「警察官向けの提携ローン」と言われた
融資の審査は金融機関の判断で、警察官向けの法律上の優遇はありません。規模基準・利害関係・収支の試算を自分で確認し、人事に許可の要否を聞いてから判断してください。
Q4. 株で損をしたことを職場に言う必要は?
損失そのものに報告義務はありません。借入が生じた場合は、身上把握の運用で申告を求められることがあります。隠して発覚するほうが重く見られます。
Q5. 家族名義でFXをすれば?
資金と判断が自分なら実態は自分の取引です。借金の問題も家族に広がるだけで、信用失墜の評価は変わりません。
Q6. 職務で知った企業の株を「買わない」だけでいい?
「売る」も同じです。職務で知った重要事実が公表される前に売買すれば、買いも売りもインサイダー取引の問題です。
まとめ|株・投信は自由、不動産は規模、FX・暗号資産は「借金にしない」、職務の情報は使わない
警察官の投資は、地方公務員法38条の面では他の公務員と同じ(株・投信・NISAは許可不要、不動産は規模で許可)です。警察官に特有なのは、損失が借金に変わる取引が33条(信用)と職務への支障として重く扱われること、職務で知った情報の利用が34条とインサイダー規制に当たること、不動産の営業が集中すること。余剰資金で長期の積立を軸にし、借りてまで投資しない、職務の情報は使わない——この線を守れば、投資は警察官の資産形成の手段として使えます。副業全体は警察官の副業は禁止?どこまでOK?をどうぞ。
参考にしている主な一次情報:地方公務員法(昭和25年法律第261号)第33条・第34条・第35条・第38条/金融商品取引法(昭和23年法律第25号)第166条(会社関係者の禁止行為)(いずれもe-Gov法令検索)/国税庁「株式等の譲渡所得」「外国為替証拠金取引(FX)の課税」「暗号資産に関する税務上の取扱い」「給与所得者で確定申告が必要な人」。
※情報は執筆時点のもので、不動産の規模基準・身上把握の運用は都道府県警察ごとに異なります。実際に動く前に、所属の人事担当にご確認ください。

