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消防士の退職後の副業・起業に制限はある?消防設備業も防災コンサルも開業できる、避けるのは「古巣への営業・検査への働きかけ2年」と査察情報——38条の2の消防版 2026

キャリア・横断
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消防士の退職後の進路は、防災コンサル・消防設備業・防火管理の講師・警備・ドライバーなど、在職中の経験が直結する仕事が多い職業です。そして、ここに落とし穴があります。防災・消防設備の仕事は、古巣(消防本部・消防署)の査察・検査の相手方になる仕事だからです。地方公務員法38条の2は、退職後2年間、離職前5年間に在籍した組織への契約・処分に関する働きかけを禁じています。「元消防士として消防署に顔が利く」を売りにする営業は、この条文に正面から当たります。この記事は、地方公務員法34条・38条の2、消防法の資格制度(消防設備士・防火管理者)を根拠に、消防士の退職後の副業・起業・再就職の線を整理します。在職中の線は消防士・救急救命士の副業完全ガイド、処分は消防士の副業がバレたらどうなる?へ。


結論:退職後の副業・起業は自由。消防設備業・防災コンサルも開業できる。縛られるのは「古巣への働きかけ2年」と「秘密」

退職後にやりたいこと 規制 見立て
消防設備業者に就職・消防設備士として働く 消防設備士免状(消防法17条の5以下)。元消防職員に欠格事由はない ◎ 在職中の経験で試験の一部免除の対象になることがある
消防設備業・防災コンサルを開業 なし(消防設備の工事・整備は免状が必要) ◎
防火管理者講習・応急手当の講師 なし ◎ 講習実施機関の要件に従う
企業の防災担当・危機管理部門 なし ◎
警備・ドライバー(大型免許・救急の経験) なし(警備業法3条・14条に元公務員の欠格はない) ◎
古巣の消防本部・署に自社の設備・点検を売り込む 地方公務員法38条の2 △ 退職後2年間、離職前5年間に在籍した組織への契約等に関する働きかけは不可
査察で知った事業所の情報を営業に使う 地方公務員法34条 ✕ 退職後も永続

線①:38条の2——消防士の場合、どの仕事が当たるか

38条の2第1項は、退職して営利企業等の地位に就いた元職員(再就職者)が、離職前5年間に在籍していた執行機関の組織等の職員に対し、その自治体とその企業等との契約・処分に関する事務で離職前5年間の職務に属するものについて、離職後2年間、働きかけをすることを禁じています。

消防士にとっての「執行機関の組織等」は市町村の消防本部・消防署です。当たりやすい形は次のとおりです。

  • 退職後に入った消防設備業者の営業として、消防署の庁舎の設備点検・車両装備の契約を取りに行く
  • 自分で設立した防災用品の会社の製品を、元の消防本部に売り込む
  • 防災コンサルとして、元の消防本部が発注する訓練・計画策定の業務委託に、元同僚への働きかけで食い込む

注意したいのは、「処分に関する事務」も含まれることです。消防の査察・立入検査・設備検査・許認可は「処分」の側面を持ちます。退職後に入った設備業者の顧客(防火対象物)について、元同僚に検査の手心を頼むことは、契約ではなく処分に関する働きかけとして38条の2の問題になり得ます。「元消防士だから署に顔が利く」は、売りにした瞬間に違反の形になります。

逆に、古巣と無関係の民間企業・個人を顧客にする防災コンサル・設備点検・講師は、38条の2とは関係ありません。


線②:34条——査察で知った情報は退職後も使えない

消防職員は、立入検査・設備検査・危険物施設の検査で、事業所の内部(設備の不備・違反の履歴・建物の構造・危険物の保管状況)を知る立場にあります。34条の秘密を守る義務は退職後も続くので、

  • 査察で知った「設備が古い」「指摘を受けた」事業所に、退職後に営業をかける
  • 検査で知った建物の構造・危険物の情報を、コンサルの資料に使う
  • 救急活動で知った個人の病歴・家庭の事情を、講演や執筆で使う

は34条違反です。「元消防士」と名乗ること自体は自由で、売れるのは公開情報と一般化した経験までです。


線③:資格——消防設備士・防火管理者・応急手当指導員

  • 消防設備士:消防用設備の工事・整備・点検に必要な国家資格(甲種・乙種)。消防職員としての経験年数が試験の一部免除の要件に関わることがある(受験資格・免除の詳細は消防試験研究センターの案内で確認)。在職中の受験は報酬の出ない活動なので38条の対象外
  • 防火管理者・防災管理者の講習講師:講習の実施機関(消防本部・日本防火・防災協会等)の要件に従う。元消防職員が講師を務める例は多い
  • 応急手当普及員・指導員:救急救命士・救急隊員の経験は、退職後の応急手当講習・イベント救護の仕事に直結する。救急救命士の資格は国家資格で退職後も有効だが、救急救命処置は救急用自動車等・医師の指示下という法律上の枠(救急救命士法)があり、民間で行える範囲は限られる

在職中の処分歴の影響

懲戒処分(戒告・減給・停職・免職)は刑罰ではないので、消防設備士・警備員・運転の各資格の欠格事由にはなりません。拘禁刑以上の刑を受けた場合は、警備業法で5年間の欠格、消防設備士免状も返納命令の対象になり得ます。無許可副業での処分歴は、法律上の欠格ではなくても、同じ業界(消防設備・防災)に進む場合は信用の面で伝わりやすい点に注意してください。


退職までの逆算|消防士版

時期 やること 規制
3〜5年前 消防設備士・防災士・大型免許など、退職後の柱になる資格を取る(報酬なし=38条の外)。防災・救急の執筆の下書きを溜める —
2年前 許可を取って単発の講演・執筆を始める(管内の事業者から報酬を受けない形)。退職後の実績になる 38条の許可
1年前 再就職先を人事の正規ルートで。設備業者・防災企業に入るなら「2年間は古巣への営業に関われない」を先方と共有。取引先への個人的な就職活動はしない 在職中の求職規制(自治体の条例)
退職〜2年 古巣と無関係の顧客で事業を作る。消防署・本部への営業・検査に関する働きかけはしない 38条の2
退職2年後〜 38条の2が明ける。公的な調達手続で対応。34条は続く 34条

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仕分け表|退職後の仕事を「古巣との距離」で並べる

仕事 38条の2(古巣への働きかけ) 34条(査察・救急の情報) 見立て
企業の防災担当・危機管理 関係なし(古巣と契約しない限り) 一般化した経験のみ ◎ 最も線が少ない
防火管理者講習・応急手当の講師 依頼を受ける形なら問題なし 同上 ◎
民間向けの防災コンサル・設備点検 顧客が民間なら関係なし 査察で知った事業所に営業しない ○
設備業者の営業(公共案件担当) 古巣の案件は2年間不可 同上 △ 役割分担が要る
「元消防士の顔」で古巣に売り込む ✕ ✕ ✕

税金|退職後の最初の1年

設備業者に就職すれば給与所得、開業すれば事業所得、講師・執筆は雑所得または事業所得、年金が始まれば雑所得。退職した年は退職所得の扱い(退職所得の受給に関する申告書を出していれば通常は申告不要)を確認してください。開業するなら開業届と青色申告の選択で控除が変わります。退職後の所得はどこも年末調整をしてくれないので、1年分の収入と経費を自分で集計します。帳簿と申告書を一か所で済ませたい場合は、弥生のクラウド確定申告ソフトのような会計ソフトを使う方法があります(料金・対応範囲は公式サイトでご確認ください)。[PR]


よくある質問

Q1. 退職後に消防設備業者に入り、管内の事業所を回る営業は?

管内の民間事業所への営業は38条の2の対象外です(相手が古巣の職員ではない)。ただし査察で知った情報(34条)を使うことはできません。古巣の消防署・本部への営業と、検査に関する働きかけだけが2年間禁じられます。

Q2. 元の消防本部から「退職後に訓練の講師を頼みたい」と言われた

自治体側から依頼を受けて業務委託や会計年度任用で講師を務めることは、自分から働きかける形ではないので38条の2の趣旨には反しません。契約手続は自治体の正規の調達・任用手続で行われます。

Q3. 救急救命士として民間救急で働くのは?

救急救命士法の枠内(救急救命処置は救急用自動車等で医師の指示下)で、民間救急事業者に雇用される形は可能です。38条の2は民間救急が古巣と契約する場面でのみ関係します。

Q4. 退職前に副業で処分を受けた。消防設備士は取れない?

懲戒処分は欠格事由ではありません。拘禁刑以上の刑を受けた場合のみ免状の返納命令等の対象になり得ます。

Q5. 消防団員として残りながら副業するのは?

非常勤の消防団員は特別職で、38条の適用はありません。団員報酬の税金と本業側の規定は消防団員は副業していい?へ。


まとめ|設備業も防災コンサルも開業できる。避けるのは「古巣への営業・検査への働きかけ」と「査察情報」

消防士の退職後の副業・起業は自由で、消防設備士・防災コンサル・講師・警備に元消防職員の欠格事由はありません。残るのは地方公務員法38条の2(退職後2年間、離職前5年の組織への契約・処分に関する働きかけ禁止)と34条(秘密・永続)。消防の仕事は古巣の査察の相手方になる仕事が多いので、「元消防士だから署に顔が利く」を売りにせず、古巣と無関係の顧客を軸にする——これが規制に触れない線です。公務員全体の退職後は公務員の退職後の副業・起業・再就職に制限はある?をどうぞ。


参考にしている主な一次情報:地方公務員法(昭和25年法律第261号)第34条・第38条・第38条の2/消防法(昭和23年法律第186号)第17条の5〜第17条の7(消防設備士)・第8条(防火管理者)/救急救命士法(平成3年法律第36号)/警備業法(昭和47年法律第117号)第3条・第14条(いずれもe-Gov法令検索)/国税庁「退職金と税」「給与所得者で確定申告が必要な人」。

※情報は執筆時点のもので、再就職規制の具体的な範囲は各市町村の条例・人事委員会規則、資格の受験資格・免除は試験機関の案内によります。実際に動く前に、所属の人事担当と試験機関にご確認ください。

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