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非常勤講師の社会保険は掛け持ちでどう決まる?健保法3条1項9号・厚年法12条5号は「事業所ごと」判定|公立と私立で規模要件が違う 2026

キャリア・横断
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非常勤講師は、1校あたりのコマ数が少ないぶん、複数の学校を掛け持ちする働き方が普通にあります。ここで必ずぶつかるのが社会保険です。「2校合わせれば週20時間を超えるのに、どちらでも入れないと言われた」「片方だけで入ることになったが、もう1校の分はどうなるのか」——迷いの原因は、加入の判定が「合計」ではなく「事業所ごと」に行われることにあります。この記事は、健康保険法3条1項9号、厚生年金保険法12条5号、健康保険法44条3項、厚生年金保険法24条2項を根拠に、掛け持ちのときに何がどう決まるのかを整理します。契約の形そのものは公立と私立で教員の副業ルールはどう違うか、税の側は副業所得20万円以下でも住民税は要るへ。


結論:判定は事業所ごと。合計では入れない

論点 結論 根拠
2校の労働時間を足して判定するか 足さない。1校ずつ判定する 健保法3条1項9号/厚年法12条5号
基本の線 通常の労働者の所定労働時間・所定労働日数の4分の3以上なら加入 同上
4分の3未満のとき 週20時間以上・月額8.8万円以上・学生でない、をすべて満たせば加入 同上(イ〜ハのいずれにも当たらないこと)
2校とも加入になったら 報酬月額を合算して標準報酬を決め、保険料を按分 健保法44条3項/厚年法24条2項
どちらでも入らないとき 国民健康保険・国民年金に自分で加入する —

線①:4分の3という基本の線

健康保険法3条1項9号は、被保険者となれない者として、「その一週間の所定労働時間が同一の事業所に使用される通常の労働者の一週間の所定労働時間の四分の三未満である短時間労働者」または「その一月間の所定労働日数が……四分の三未満である短時間労働者」に該当し、かつイからハまでのいずれかの要件に該当する者を挙げています。厚生年金保険法12条5号もほぼ同じ構造です。

裏返して読むと、通常の労働者の4分の3以上働いていれば、この号には当たらない=被保険者になるということです。ここでいう「通常の労働者」は同一の事業所に使用される通常の労働者を指します。つまり比べる相手はその学校の常勤の教員であり、他校の勤務時間は関係ありません。判定が事業所ごとになるのは、条文が「同一の事業所」と書いているからです。

非常勤講師の場合、「通常の労働者の所定労働時間」が何時間なのかを学校側が示さないと判定できません。契約時に「この学校の常勤の所定労働時間は週何時間で、自分は何時間か」を確認してください。コマ数だけで話が進むと、授業以外の時間をどう数えるかで食い違いが出ます。


線②:4分の3未満でも入る場合がある

4分の3未満であっても、イ・ロ・ハのいずれにも当たらなければ被保険者になります。イ〜ハは次の内容です。

号 内容 裏返すと
イ 1週間の所定労働時間が20時間未満であること 週20時間以上なら、この要件には当たらない
ロ 報酬について厚生労働省令の定めにより算定した額が8万8,000円未満であること 月8.8万円以上なら、この要件には当たらない
ハ 高等学校の生徒・大学の学生その他厚生労働省令で定める者であること 学生でなければ、この要件には当たらない

ロの「8万8,000円」は、最低賃金法4条3項各号に掲げる賃金に相当するものとして厚生労働省令で定めるものを除いて算定します。賞与や残業代、通勤手当のように毎月変動するものは、この判定の基礎から外れる扱いです。基本の報酬部分で見る、と考えてください。


線③:公立と私立で「企業規模の壁」が違う

ここが非常勤講師にとっていちばん見落とされやすい点です。短時間労働者への適用には、事業所の規模による経過措置があります。平成24年法律第62号(公的年金制度の財政基盤及び最低保障機能の強化等のための国民年金法等の一部を改正する法律)附則46条1項は、当分の間、特定適用事業所以外の適用事業所に使用される「特定四分の三未満短時間労働者」は健康保険の被保険者としないとしています。そして同条12項が、特定適用事業所を「特定労働者の総数が常時五十人を超えるもの」と定義しています。

重要なのは、附則46条1項が対象から「国又は地方公共団体の当該適用事業所を除く」と書いていることです。

勤務先 規模の要件 意味
公立学校(地方公共団体) かからない 規模にかかわらず短時間労働者への適用の対象になる
私立学校(学校法人) かかる 特定労働者が常時50人を超えるかどうかで扱いが変わる

つまり同じ週19時間の非常勤でも、公立と小規模な私立とで結論が変わり得るということです。掛け持ちの組み方を考えるとき、勤務先の設置者が公か私かは無視できません。

なお公立学校の非常勤講師の場合、加入先が健康保険(協会けんぽ等)ではなく地方公務員等共済組合になることがあります。会計年度任用職員としての任用形態と勤務時間によって変わるため、「自分は共済か、健保か、どちらでもないか」を任用時に確認してください。ここが曖昧なまま働き始めると、後から遡って手続きすることになります。私立学校であれば私立学校教職員共済に加入する場合もあります。


線④:2か所とも被保険者になったらどうなるか

掛け持ちの結果、2校ともで加入要件を満たすことがあります。その場合、被保険者資格は1つにまとまるのではなく、報酬を合算して1つの標準報酬を決める形になります。

同時に二以上の事業所で報酬を受ける被保険者について報酬月額を算定する場合においては、各事業所について……算定した額の合算額をその者の報酬月額とする。(健康保険法44条3項)

厚生年金保険法24条2項も同じ内容を定めています。合算した報酬月額から標準報酬が決まり、保険料はそれぞれの事業所が支払う報酬の額に応じて按分されます。手続としては、どちらの保険者・年金事務所を選ぶかを届け出る必要があります(いわゆる二以上事業所勤務届)。届出には期限があるので、2校目の勤務が始まる時点で確認してください。

合算されるということは、片方だけで見ていたときより保険料の総額が上がるということでもあります。手取りの見込みを立てるときは、ここを織り込んでおかないと想定より少なくなります。


組み方の目安

組み方 社会保険の結果 向いている人
1校で4分の3以上、他は少量 主たる1校で加入。手続がいちばん簡単 収入を安定させたい人
2校とも週20時間以上・月8.8万円以上 合算して標準報酬を決定。届出が必要 複数校で継続的に持つ人
各校とも週20時間未満 どちらでも加入しない。国保・国年に自分で入る 本業が別にある人、扶養内で働く人
学校の授業+業務委託の仕事 業務委託は判定に入らない(雇用ではない) 時間の裁量を持ちたい人

最後の行が実務上は効きます。雇用ではない働き方(業務委託・講師登録)は、社会保険の加入判定にも労働時間の通算にも入りません。掛け持ちの校数を増やすと判定が複雑になる一方、雇用でない形を1つ持つと、時間の調整も税の処理も自分の側で完結します。

雇用ではない形で教える選択肢としては、たとえばよみかきそろばんくらぶのオンライン先生募集があります。自宅からZoomで個別に指導する形で、雇用契約でも業務請負契約でもない講師登録という契約形態です(源泉徴収が行われないため、所得額によっては自分で確定申告をすることになります)。月曜〜土曜の7〜21時の中から可能な時間を選ぶ形なので、学校のコマが決まってから空いた時間帯に合わせる組み方ができます。応募には大卒であること・長期(最低3年以上)続けられることといった条件があり、Zoomに必要な機材や回線は自分で用意します。学校に在職している方は、契約の形にかかわらず、就業規則や兼職の取扱いを先に確認してください。条件や募集状況は変わることがあるため、最新の内容は公式サイトでご確認ください。[PR]


手順:確認する順番

  1. 各校で「通常の労働者の所定労働時間・所定労働日数」を聞く。4分の3の分母がこれ
  2. 自分の所定労働時間を数字で確認する。コマ数ではなく時間で契約書に書いてもらう
  3. 設置者を確認する。公立なら規模要件がかからない。私立なら勤務先に確認
  4. 加入先を確認する。共済か、協会けんぽ等か、私学共済か
  5. 2か所とも加入なら届出をする。選択する保険者・年金事務所を決めて期限内に出す
  6. どちらでも入らないなら国保・国年の手続をする。放置すると未加入期間ができる

よくある疑問

Q. 2校合わせて週25時間なら加入できますか。
できません。健保法3条1項9号も厚年法12条5号も「同一の事業所」を基準にしているので、他校の時間は足せません。1校あたりで判定します。

Q. 労働時間の通算という話を聞きましたが、これとは違うのですか。
違います。労働基準法38条1項の労働時間の通算は、時間外労働の割増賃金など労働時間規制の話です。社会保険の加入判定は各法の条文に従って事業所ごとに行われます。2つの制度で「合算するかどうか」の結論が逆になるので、混ぜないでください。

Q. 4分の3以上になったのに加入させてくれません。
要件を満たせば事業主に届出の義務があります。まず学校の事務担当に確認し、それでも解決しない場合は年金事務所(または該当する共済組合)に相談してください。

Q. 扶養の範囲で働きたい場合はどう見ればよいですか。
被扶養者の認定基準は加入している保険者が定めており、加入要件とは別の基準です。「自分が被保険者になる要件」と「扶養に入れる要件」は別々に確認してください。年度の途中で勤務時間が増えると、どちらの判定も変わります。


参考にしている主な一次情報:健康保険法(大正11年法律第70号)第3条・第44条/厚生年金保険法(昭和29年法律第115号)第12条・第24条/公的年金制度の財政基盤及び最低保障機能の強化等のための国民年金法等の一部を改正する法律(平成24年法律第62号)附則第46条/労働基準法(昭和22年法律第49号)第38条。条文はe-Gov法令検索で確認しています。

※情報は執筆時点のものです。短時間労働者への適用の範囲は法改正と経過措置によって変わり、加入先(共済・協会けんぽ・私学共済)は任用形態と設置者によって異なります。実際の判定は勤務先の事務担当、年金事務所、加入する保険者にご確認ください。この記事は特定の働き方を勧めるものではありません。

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