病気休暇や休職に入ると収入が段階的に下がります。給与の全額支給が一定期間で切れ、休職に移ると給与が減額または無給になり、共済組合の傷病手当金に切り替わる——この流れの中で「療養中でもできる副業を探したい」と考える人は少なくありません。結論から言うと、療養中の副業は「制度上できない」とまでは言えないものの、実際にはほぼ選べないというのが正確なところです。理由は2つあり、休職中も職員の身分が残るので地方公務員法38条の許可が必要なこと、そして傷病手当金が「療養のため引き続き勤務に服することができない」ことを前提に支給されることです。この記事は、地公法28条・30条・35条・38条、教育公務員特例法17条、地方公務員等共済組合法68条・71条を根拠に、療養中と復職後で何が変わるのかを整理します。育休の場合は育休中の教員の副業、承認申請の書き方は兼業承認の理由欄の書き方へ。
結論:療養中は「やらない」、復職後に「申請して始める」
| 時期 | 副業の可否 | いちばんの理由 |
|---|---|---|
| 病気休暇中(有給) | 実質的に不可 | 給与が出ている期間。療養専念が前提 |
| 休職中(傷病手当金) | 強く勧められない | 手当金は「勤務に服することができない期間」に対して出る(共済法68条1項) |
| 復職訓練・リハビリ勤務中 | 不可に近い | 復職可否の判断材料になる時期。負荷を増やす行為は説明できない |
| 復職後 | 可(許可・承認が要る) | 本務に戻っているので「支障がない」を説明できる |
線①:休職しても職員のまま
地方公務員法28条2項は、職員が「心身の故障のため、長期の休養を要する場合」または「刑事事件に関し起訴された場合」に該当するときは、その意に反して休職することができると定めています。同条3項は、休職の手続と効果は法律に特別の定めがある場合を除き条例で定めるとしています。休職の期間、給与がどこまで出るか、延長できるかは自治体の条例なので、まず自分の自治体の「職員の分限に関する条例」と「給与条例」を見てください。
重要なのは、休職は免職ではないということです。職を免じられるのではなく、職員のまま職務に従事しない状態に置かれます。だから服務に関する規定は生きています。地公法30条は「すべて職員は、全体の奉仕者として公共の利益のために勤務し、且つ、職務の遂行に当つては、全力を挙げてこれに専念しなければならない」とし、35条は勤務時間と職務上の注意力のすべてを職責遂行のために用いるべきことを定めています。そして38条1項が、報酬を得ていかなる事業・事務にも従事するには任命権者の許可が要るとしています。
つまり「休職中だから服務は関係ない」という理解は成り立ちません。報酬を得る仕事をするなら、休職中でも許可の対象です。
もう一つ押さえておきたいのが、病気休暇と休職は別の制度だという点です。病気休暇は勤務時間条例・休暇条例で定められた休暇の一種で、多くの自治体では一定期間まで給与が支給されます。これに対して休職は、地公法28条2項に基づく分限処分です。給与の扱いも条例で別に定められ、無給または減額支給に変わります。「収入が急に落ちる境目」は、この病気休暇から休職に移るタイミングにあります。副業を考え始める人が多いのもここですが、切り替わったからといって服務が緩むわけではありません。むしろ分限処分を受けている状態なので、慎重に扱われる場面が増えます。
線②:傷病手当金の前提と副業は噛み合わない
地方公務員等共済組合法68条1項は、傷病手当金について次のように定めています。
組合員が公務によらないで病気にかかり、又は負傷し、療養のため引き続き勤務に服することができない場合には、勤務に服することができなくなつた日以後三日を経過した日から、その後における勤務に服することができない期間、傷病手当金を支給する。
支給の前提は「療養のため引き続き勤務に服することができない」状態です。ここで別の仕事に従事していれば、その前提と矛盾しているのではないかという問いが必ず立ちます。医学的に「本務は無理だが別の作業なら可能」という状態は現実にはあり得ますが、それを説明する責任は本人側にあり、証明は簡単ではありません。
| 条文 | 内容 |
|---|---|
| 共済法68条1項 | 療養のため勤務に服することができない期間に支給。待期3日 |
| 共済法68条2項 | 額は標準報酬月額の平均額の22分の1の3分の2(1日あたり) |
| 共済法68条4項 | 支給期間は同一の傷病について通算1年6月(結核性の病気は3年) |
| 共済法68条6項 | 同一の傷病で障害厚生年金を受けられるときは支給しない(例外あり) |
| 共済法71条1項 | 支給期間に係る報酬の全部または一部を受ける場合は、政令で定める額の限度で支給しない |
71条1項の「報酬」は、共済法2条1項5号で地方自治法204条の給料および手当(期末手当・勤勉手当等を除く)と定義されています。つまり自治体から受ける給与のことで、副業先から受け取る報酬をそのまま指すものではありません。ただし前段のとおり、副業の事実そのものが「勤務に服することができない」という支給要件の判断に影響します。条文上の調整規定に載っていないことと、やっても問題にならないことは別です。
線③:復職の判断材料になるという実務上の問題
制度の話とは別に、現実的な問題があります。復職の可否は、主治医の診断書と、任命権者・産業医の判断で決まります。ここで「療養中に別の仕事をしていた」という事実は、復職判定において不利にも有利にも働き得る材料になります。
不利に働く典型は、「本務には戻れないと言いながら他で働けるのはなぜか」という問いに答えられない場合です。逆に、リハビリの一環として主治医の了解を得たうえで軽度の作業を行い、それを記録として残していれば、段階的な回復の証拠として説明できる場合もあります。分かれ目は「主治医と所属に事前に共有しているか」の一点です。黙って始めるのがいちばん悪い選択になります。
復職後:ここから設計が変わる
復職すると本務の勤務が戻ります。この時点で初めて、教育公務員特例法17条1項の「本務の遂行に支障がないと任命権者において認める場合」という要件に対して、具体的な材料を出せるようになります。教育に関する事業・事務であれば17条、それ以外であれば地公法38条1項の許可という整理になるのが一般的ですが、どちらで扱うかを決めるのは任命権者なので、所属の事務担当に先に確認してください。
復職直後に副業を申請する場合、任命権者がいちばん気にするのは再発のリスクです。申請書には「復職後どれくらいの期間が経ったか」「主治医の意見」「1週間あたりの上限時間」「体調が崩れたときにすぐ止められる契約か」を書けると、判断する側が扱いやすくなります。
| 選ぶ基準 | 復職後に向く形 | 向かない形 |
|---|---|---|
| 止めやすさ | 1件ごとに受ける単発の仕事 | 継続契約・毎週固定シフト |
| 時間の裁量 | 納期だけ決まっている在宅作業 | 相手の時間に合わせる対面業務 |
| 体調変動への強さ | 量を自分で調整できるもの | ノルマ・人員に穴が開くもの |
| 説明のしやすさ | 本務と関係のない分野で、氏名が表に出ないもの | 勤務先が特定される発信を伴うもの |
「1件ごとに受けて、終わったら次を受けるか決める」形をいちばん作りやすいのは、クラウドソーシングです。たとえばランサーズは仕事を1件単位で受注する形なので、体調に合わせて受ける件数を自分で決められ、続けられないと思ったら次を受けないという止め方ができます。登録自体に費用はかかりませんが、報酬からシステム利用料が差し引かれる仕組みで、実際にいくら受け取れるかは案件と手数料によって変わります。在職中の方は、受注する前に任命権者の許可・承認の手続きを済ませてください。条件やサービス内容は変わることがあるため、最新の内容は公式サイトでご確認ください。[PR]
療養中にやっておけること(報酬を伴わないもの)
報酬が発生しなければ38条1項の許可の対象からは外れます。療養の妨げにならない範囲で、復職後に効いてくる準備はできます。ただし「無報酬なら何をしてもよい」という意味ではなく、体調の回復が最優先である点は変わりません。
- 自治体の兼業取扱要領を読む。様式・提出先・審査にかかる期間を先に把握しておく
- 復職後にやりたい仕事の要件を調べる。資格・機材・必要な回線を書き出す
- 収入の必要額を出す。手当金が切れる時期(通算1年6月)から逆算して、いくら必要かを数字にする
- 主治医に「復職後に副業を考えている」と伝えておく。復職判定の時点で共有されている状態にする
よくある疑問
Q. 休職中にアフィリエイトやネット物販をするのはどうですか。
報酬が発生する時点で38条1項の対象です。規模によっては「自ら営利企業を営む」に当たると評価されることもあります。休職中に無断で始めるのは、服務上も傷病手当金の関係でも危険な選択です。
Q. 傷病手当金はいつまで出ますか。
共済法68条4項により、同一の傷病については待期3日経過後から通算1年6月(結核性の病気は3年)です。通算なので、途中で復職して再び休んだ場合も、合計でこの期間になります。切れる時期は先に計算しておいてください。
Q. 退職した後も傷病手当金は続きますか。
68条5項は、1年以上組合員であった者が退職の際に傷病手当金を受けている場合、退職しなかったとしたら受けられた期間、継続して支給するとしています。ただし他の共済組合の組合員資格を取得したときは、この限りではありません。
Q. 復職後すぐに申請したら不許可になりますか。
不許可と決まっているわけではありませんが、判断材料が少ない時期であることは確かです。上限時間を自分から低く設定して出す、期間を区切って出す、といった形にすると、審査する側が判断しやすくなります。
参考にしている主な一次情報:地方公務員法(昭和25年法律第261号)第28条・第30条・第35条・第38条/教育公務員特例法(昭和24年法律第1号)第17条/地方公務員等共済組合法(昭和37年法律第152号)第2条・第68条・第71条。条文はe-Gov法令検索で確認しています。
※情報は執筆時点のものです。休職の期間・給与の取扱い・復職の手続は自治体の条例と規則で定められており、内容が異なります。実際の判断は所属の教育委員会・事務担当、加入している共済組合、主治医にご確認ください。この記事は療養中の就労を勧めるものではありません。

