定年後に再任用で働く公務員から、「再任用は非常勤みたいなものだから副業は自由では?」という質問が増えています。答えは逆です。定年前再任用短時間勤務職員は「短時間勤務の職」を占める職員で、地方公務員法38条ただし書のかっこ書きによって非常勤職員の適用除外から外されている=正規職員と同じ許可制です。一方、定年退職後に再任用されずに完全に退職した人は38条の外で、残るのは38条の2(退職後2年間の古巣への働きかけ禁止)と34条(秘密)だけ。この記事は、地方公務員法22条の4・38条・38条の2を根拠に、「再任用で働く」「再任用せず退職する」「会計年度任用職員として働く」の3つの選択肢で副業の自由度がどう違うかを整理します。退職後の全体像は公務員の退職後の副業・起業・再就職に制限はある?へ。
結論:再任用短時間勤務は「許可制のまま」。副業の自由度は「完全退職>パートタイム会計年度任用>再任用」
| 定年後の働き方 | 身分 | 38条(副業の許可制) | 38条の2(退職後2年の働きかけ規制) |
|---|---|---|---|
| 定年前再任用短時間勤務職員(22条の4) | 一般職の職員(短時間勤務の職) | 適用=許可制(ただし書のかっこ書きで「短時間勤務の職を占める職員」は非常勤の除外から外されている) | 在職中なので対象外(退職後に適用) |
| 定年延長で常勤のまま勤務 | 一般職の常勤職員 | 適用=許可制 | 同上 |
| パートタイム会計年度任用職員(22条の2第1項1号)として再就職 | 非常勤職員 | 適用なし=許可不要 | 任用前の「離職」から2年間は適用される(再任用者等の除外に当たらない限り) |
| 完全に退職(民間就職・独立・年金生活) | 元職員 | 適用なし | 退職後2年間適用+34条(秘密)は永続 |
条文で確認する|「短時間勤務の職」は38条の適用除外から外されている
地方公務員法38条1項のただし書は次のとおりです。
ただし、非常勤職員(短時間勤務の職を占める職員及び第二十二条の二第一項第二号に掲げる職員を除く。)については、この限りでない。
22条の4第1項は、定年前再任用短時間勤務職員を「短時間勤務の職(週の通常の勤務時間が、同種の常勤の職より短い職)」に採用される職員と定めています。つまり、再任用短時間勤務職員は「非常勤職員」ではあるものの、ただし書のかっこ書きで明示的に除外から外されているため、38条1項の本文が適用されます。報酬を得る副業には任命権者の許可が必要で、無許可は29条の懲戒の対象です。
定年延長(28条の6)で常勤のまま働く場合は、そもそも常勤職員なので当然に38条の適用があります。
再任用中に副業をするなら|許可の取り方は現役と同じ
再任用短時間勤務職員の副業許可は、現役の正規職員と同じ手続です。申請書に「従事先・内容・期間・時間・報酬・職務との関係・支障がない理由」を書き、任命権者の許可を受けます。再任用ならではのポイントは次のとおりです。
- 勤務時間が短い分、副業の時間は取りやすい。週3日勤務なら残り2日は副業に使える。許可の条件「勤務時間外に限る」を満たしやすい
- 「退職後の準備」としての副業が許可されやすい。再任用の任期(定年退職日相当日まで)が区切られているので、その後の独立・再就職に向けた講師・執筆の実績づくりは説明しやすい
- 利害関係は現役時代と同じ基準で見られる。直前まで在籍した部署の取引先で働く形は、在職中は38条の許可が出にくく、退職後は38条の2の対象になる
- 許可申請の書き方は公務員の兼業許可申請の書き方と同じ
パートタイム会計年度任用職員として働く選択肢|38条は外れるが38条の2は残る
定年退職後に、再任用ではなくパートタイム会計年度任用職員(22条の2第1項1号)として自治体に再就職する形があります。パートタイム会計年度任用職員は38条ただし書の「非常勤職員」に当たり、かっこ書きの除外(短時間勤務の職・フルタイム会計年度任用職員)にも該当しないので、38条の許可は不要です。詳細は会計年度任用職員の副業へ。
ただし、38条の2(再就職者による依頼等の規制)は「職員であった者であって離職後に営利企業等の地位に就いている者」を対象にしており、定年退職の「離職」から2年間は、退職前5年間に在籍した部署への契約等に関する働きかけが禁じられます。会計年度任用職員として自治体に勤めながら、並行して営利企業の役員や個人事業主として古巣に営業をかける形はこの規制に当たります。
完全に退職する選択肢|副業は自由。残るのは2つ
再任用も会計年度任用も受けずに退職すれば、38条は外れ、副業・起業・掛け持ちは自由です。残るのは、
- 38条の2:退職後2年間、離職前5年間に在籍した執行機関の組織等の職員に対し、その自治体と自分の再就職先(自分の会社を含む)との契約・処分に関する事務について働きかけをしてはならない
- 34条:職務上知り得た秘密は退職後も漏らしてはならない
この2つを守れば、執筆・講師・コンサル・個人事業・会社設立・複数の仕事の掛け持ち、いずれも制限はありません。
3つの選択肢を「副業の自由度×収入の安定」で比べる
| 再任用短時間勤務 | パートタイム会計年度任用 | 完全退職 | |
|---|---|---|---|
| 副業の許可 | 必要(38条) | 不要 | 不要 |
| 古巣への働きかけ規制(38条の2) | 在職中は対象外(退職後に2年) | 離職から2年 | 退職から2年 |
| 秘密(34条) | 全員・永続 | ||
| 給与・共済 | 再任用の給料表。共済は条件により継続 | 会計年度任用の報酬。社会保険は勤務時間による | 年金(支給開始まで空白の可能性) |
| 任期 | 定年退職日相当日まで(1年更新) | 1会計年度(更新あり) | — |
| 向いている人 | 本業の収入を軸に、許可を取って小さく副業を始めたい | 自治体での週2〜3日の仕事を軸に、副業を自由に組みたい | 退職金と貯蓄を土台に、独立・再就職に全振りしたい |
定年の3年前から逆算する|どの選択肢でも効く準備
- 3年前:退職後に売る技能を決め、報酬の出ない範囲(学習・作品・資格)で土台を作る。38条の対象外
- 2年前:許可を取って単発の講演・執筆を始める。再任用を選ぶ場合は、再任用後の許可の前例になる
- 1年前:再任用・会計年度任用・完全退職のどれにするかを人事と相談して決める。副業の計画と合わせて
- 退職後〜2年:38条の2の期間。古巣の契約に関わる営業だけは避ける
執筆・講師・事務代行など、退職後の柱になる案件の相場はランサーズのようなクラウドソーシングで募集を眺めると把握できます(在職中の受注は許可の後に)。[PR]
税金|再任用の給与+副業、年金+副業で変わること
再任用中は給与所得があるので、副業の所得が年20万円を超えれば所得税の確定申告、20万円以下でも住民税の申告が必要です。完全退職後に年金と副業の所得が混ざる場合、公的年金等の収入が400万円以下で、年金以外の所得が20万円以下なら確定申告不要の制度がありますが、住民税の申告は別途必要です。退職した年は退職所得の扱い(退職所得の受給に関する申告書を出していれば通常は申告不要)も確認してください。
再任用の給与・年金・副業の報酬が混ざる年は、源泉徴収票と支払調書を集めて申告書に落とす作業が出ます。帳簿と申告書を一か所で済ませたい場合は、弥生のクラウド確定申告ソフトのような会計ソフトを使う方法があります(料金・対応範囲は公式サイトでご確認ください)。[PR]
よくある質問
Q1. 再任用は「嘱託」だから副業は自由だと先輩に言われた
定年前再任用短時間勤務職員は22条の4に基づく一般職の職員で、38条ただし書のかっこ書きにより許可制です。制度改正前の「再任用」も短時間勤務の職であれば同じ扱いでした。先輩の時代の運用ではなく、条文で確認してください。
Q2. 再任用中に、退職後の独立に向けて会社を設立したい
自分の会社の役員に就くことは「営利企業の役員を兼ねる」に当たり、38条の許可が必要です。設立だけして役員に就かない(家族を役員にする)形は、実態として自分が営んでいれば「自ら営利企業を営む」に当たります。退職後に設立するのが現実的です。
Q3. 会計年度任用職員として再就職しつつ、民間の仕事を掛け持ちするのは?
パートタイムなら38条の許可は不要です。勤務時間の重なり(労働時間の通算)、34条(秘密)、33条(信用)、自治体の要綱で届出があればそれに従ってください。
Q4. 定年退職してすぐ、自治体と取引のある会社に再就職したい
再就職自体は可能ですが、退職後2年間は38条の2により、退職前5年間に在籍した部署への契約等に関する働きかけができません。営業担当でない役割で入るなど、社内での役割分担が必要です。
Q5. 国家公務員の再任用も同じ?
国家公務員法にも定年前再任用短時間勤務職員の制度(60条の2)があり、103条・104条の兼業制限は適用されます。退職後は106条の2以下の再就職規制が残ります。構造は地方と同じです。
まとめ|再任用は「許可制が続く」。自由にしたいなら会計年度任用か完全退職
定年前再任用短時間勤務職員は、38条ただし書のかっこ書きで非常勤の適用除外から外されているため、副業は現役と同じ許可制です。パートタイム会計年度任用職員なら38条は外れ、完全退職なら副業は自由——ただし38条の2(退職後2年の働きかけ規制)と34条(秘密)はどの道でも残ります。定年の3年前から報酬の出ない準備を始め、2年前に許可を取って実績を作り、1年前に働き方を決める。公務員全体の考え方は公務員の副業ガイドをどうぞ。
参考にしている主な一次情報:地方公務員法(昭和25年法律第261号)第22条の2・第22条の4・第28条の6・第29条・第34条・第38条・第38条の2/国家公務員法(昭和22年法律第120号)第60条の2・第103条・第104条・第106条の2(いずれもe-Gov法令検索)/国税庁「公的年金等を受給されている方へ」「給与所得者で確定申告が必要な人」。
※情報は執筆時点のもので、再任用・会計年度任用の運用、許可基準、共済・社会保険の扱いは自治体ごとに異なります。実際に動く前に、所属の人事担当にご確認ください。

