「看護師の単発派遣で副業」と検索すると、健診・イベント救護・介護施設・保育園の求人が並びます。一方で「病院の派遣は少ない」「単発は年収制限がある」とも言われます。この違いは派遣会社の方針ではなく、労働者派遣法が「病院等での看護業務」を派遣禁止にし、「30日以内の日雇派遣」を病院等以外の看護業務に限って認めているからです。この記事は、看護師の派遣・単発バイトを副業にするときの線を、派遣法・同施行令・労働基準法の条文から整理します。副業の可否(公立の許可制・就業規則)は看護師の副業はどこまでOK?、発覚の経路は看護師の副業はバレる?に分けてあります。
結論:病院への派遣は不可、施設・健診・保育園への派遣は可、単発もそこだけ可
| 働き方 | 可否 | 根拠 |
|---|---|---|
| 病院・診療所・助産所・介護老人保健施設・介護医療院・訪問看護(居宅)への派遣 | ✕ 原則不可(紹介予定派遣・へき地などの例外あり) | 派遣法施行令2条4号 |
| 特別養護老人ホーム・有料老人ホーム・デイサービス・保育園・企業の健康管理室・健診会場・イベント救護への派遣 | ◎ 可 | 同2条4号の対象外(「病院等・助産所・介護老人保健施設・介護医療院・居宅」に限定されている) |
| 上記「可」の場所への30日以内の単発派遣 | ◎ 可 | 派遣法35条の4・施行令4条1項19号(保助看法5条の業務のうち病院等以外で行うものは日雇派遣の例外業務) |
| 病院への単発派遣 | ✕ 不可 | 場所の禁止(2条4号)に当たる |
| 病院への単発の直接雇用アルバイト | ◎ 可 | 派遣ではないので派遣法の規制外。本業側の規定と労働時間の通算が残る |
「単発派遣は年収500万円以上じゃないとできない」という説明を見かけますが、看護師の病院等以外での業務は施行令4条1項19号で日雇派遣の例外業務に入っているので、年収要件(施行令4条2項の例外)に頼らずに単発派遣ができます。薬剤師の調剤がこの一覧に入っていないのと対照的です。
線①:派遣できる場所・できない場所——施行令2条4号の読み方
労働者派遣法4条1項3号は派遣が適当でない業務を政令で定めています。施行令2条4号は、保健師助産師看護師法2条・3条・5条・6条・31条2項の業務(保健師・助産師・看護師・准看護師の業務)のうち、次の場所で行われるものを派遣禁止にしています。
- 病院・診療所(「病院等」。一部を除く)
- 助産所
- オンライン診療受診施設(オンライン診療に係るもの)
- 介護老人保健施設・介護医療院
- 医療を受ける者の居宅(訪問入浴介護・介護予防訪問入浴介護に係るものを除く)
例外は、紹介予定派遣、就業場所がへき地にある場合(看護師業務は4号でも明示されている)などです。ここに書かれていない場所——特別養護老人ホーム、有料老人ホーム、デイサービス、障害者施設、保育園、学校、企業、健診会場、イベント会場——への派遣は禁止対象外で、看護師の派遣求人がこうした場所に集中しているのは条文の帰結です。
訪問看護は「居宅」で行われるので派遣不可(訪問入浴は例外)。介護施設でも「介護老人保健施設・介護医療院」は病院と同じ扱いで不可、「特養・有料老人ホーム」は可、という線があります。施設の種別を求人で確認してください。
線②:30日以内の単発派遣——看護師は「業務側の例外」に入っている
派遣法35条の4は、日雇労働者(日々または30日以内の期間を定めて雇用する労働者)の派遣を原則禁止し、例外を「政令で定める業務」と「政令で定める場合」に限っています。施行令4条1項はその業務を列挙しており、その19号が「保健師助産師看護師法5条に規定する業務」のうち病院等・助産所・オンライン診療受診施設・介護老人保健施設・介護医療院・居宅で行われるものを除くものです。
つまり、派遣が可能な場所(施設・保育園・健診・イベント等)での看護師業務は、30日以内の単発派遣も可能です。年収500万円以上・60歳以上・学生といった「人の側の例外」(施行令4条2項)は使わなくて済みます。派遣会社が単発の健診・施設の求人を看護師に出せるのはこのためです。
なお、5条の業務は「看護師」の業務です。准看護師(6条)はこの19号に入っていないので、准看護師が単発派遣をするには人の側の例外(年収500万円以上など)が必要になります。
線③:本業側の規定と労働時間の通算
派遣法の線を越えても、本業側の線が残ります。
- 公立病院の看護師:地方公務員法38条により、報酬を得て事業・事務に従事するには任命権者の許可が必要。派遣で施設に働きに出るのは「報酬を得て事務に従事」そのもので、無許可は懲戒(標準例は減給または戒告)。公立病院で許可が出る形は限られる
- 民間病院の看護師:就業規則の副業規定(届出制・許可制・禁止)に従う。「同業他社での就労」を禁じる規定がある場合、他院での直接雇用バイトは正面から当たる。施設・健診の派遣は「同業」でないと整理されることもあるが、就業規則の文言次第
- 労働時間の通算:労働基準法38条により、本業と派遣先の労働時間は通算される。本業で週40時間を超えた後の派遣労働は法定時間外で、割増賃金の義務は後から契約した側(派遣元)にかかる。派遣元が本業の所定労働時間・シフトを聞くのはこのため
- 夜勤明けの派遣:通算の問題に加え、本業側の安全配慮(疲労による事故)の問題。夜勤明けに単発派遣を入れる組み方は、本業の許可条件で制限されることがある
仕分け表|看護師の派遣・単発バイトを3本の線で見る
| やりたい形 | 派遣法(場所) | 派遣法(日雇) | 本業側 |
|---|---|---|---|
| 健診会場に1日だけ派遣 | ◎ | ◎(19号) | 許可・届出 |
| イベント救護に1日だけ派遣 | ◎ | ◎(19号) | 許可・届出 |
| 特養・有料老人ホームに週1で派遣(31日以上) | ◎ | ◎(30日超) | 許可・届出・時間通算 |
| デイサービスに1日だけ派遣 | ◎ | ◎(19号) | 許可・届出 |
| 介護老人保健施設に派遣 | ✕ | — | — |
| 他の病院に派遣 | ✕(紹介予定派遣等を除く) | — | — |
| 他の病院に直接雇用で単発バイト | 関係なし | 関係なし | 許可・届出・時間通算 |
| 訪問看護に派遣 | ✕(居宅) | — | — |
| 医療記事の監修・執筆(業務委託) | 関係なし | 関係なし | 許可が出やすい・通算なし |
派遣会社に登録する前に用意するもの
- 本業の副業許可・届出:公立は許可書、民間は届出の控え。先に通す
- 本業の所定労働時間・シフト:労働時間の通算に必要。夜勤の有無も
- 看護師免許証の写し
- 希望する場所の種別の確認:健診・イベント・特養・有料・デイ・保育園は可。老健・介護医療院・病院・訪問看護は不可
- 単発を希望する場合:看護師(5条)なら年収証明は不要。准看護師は年収500万円以上などの要件の確認書類(源泉徴収票)が求められる
税金|派遣の報酬は「給与」。本業に伝わる前提で届け出てから
派遣で受け取る報酬は派遣元からの給与所得です。給与が2か所以上になると、年末調整されない側の給与収入と他の所得の合計が年20万円を超える場合は所得税の確定申告が必要で、20万円以下でも住民税の申告は要ります。給与の副業は住民税が本業で特別徴収されるのが原則で、普通徴収に切り替えられない自治体が多く、翌年6月の住民税の通知で本業に伝わる前提で設計してください。届け出て始めた副業なら、伝わっても問題になりません。
単発派遣を年に何度も入れると、派遣元ごとの源泉徴収票が複数枚になります。帳簿と申告書を一か所で済ませたい場合は、弥生のクラウド確定申告ソフトのような会計ソフトを使う方法があります(料金・対応範囲は公式サイトでご確認ください)。[PR]
資格を「書く・監修する」側で使う道もあります。みんなの記事監修は、資格を持つ専門家として登録し、記事監修の依頼を受ける形のサービスで、登録時に本人確認と資格証の確認があります。監修料は報酬(雑所得または事業所得)になり、労働時間として通算されないため、夜勤や不規則なシフトと組み合わせやすいのが特徴です。在職中の方は、本業側の許可・届出の手続きを先に済ませてください。報酬や依頼の条件は変わることがあるため、最新の内容は公式サイトでご確認ください。[PR]
派遣以外の出口|時間の通算がない副業
派遣・直接雇用の副業は労働時間が通算され、夜勤のある本業では組める日が限られます。業務委託の医療記事の監修・執筆・看護学生向け教材の作成は通算の対象外で、本業側も「資格を活かした文筆活動」として許可の説明がしやすい形です。案件の相場はランサーズのようなクラウドソーシングで「看護師 監修」「医療 記事」などと検索すると把握できます(受注は許可・届出の後に)。[PR]
よくある質問
Q1. 「病院の単発派遣」という求人を見たが?
病院等での看護業務は派遣禁止なので、紹介予定派遣か、へき地などの例外か、実態が直接雇用(職業紹介)のどれかです。契約の相手方が派遣会社か病院かで確認できます。
Q2. 年収500万円未満でも単発派遣できる?
看護師(保助看法5条の業務)が病院等以外で働く場合は、施行令4条1項19号の例外業務なので年収要件は不要です。准看護師は19号に入っていないため、年収500万円以上・60歳以上・学生のいずれかに当たる必要があります。
Q3. 訪問入浴の派遣は?
施行令2条4号は居宅での業務を禁止しつつ、訪問入浴介護・介護予防訪問入浴介護に係るものを除外しています。訪問入浴の看護師派遣は可能です。
Q4. 派遣先で事故が起きたら、本業に影響する?
派遣先での業務は派遣元・派遣先の責任関係の下にあり、本業は直接の当事者ではありません。ただし無届の副業で事故が起きれば、本業では「無届」と「信用」の問題として扱われます。届け出てから働くのはこのためでもあります。
Q5. 夜勤専従で昼間が空く。昼の単発派遣を入れてもいい?
派遣法上は可能ですが、労働時間の通算と本業側の安全配慮の問題があります。夜勤明けの当日に入れる組み方は、本業の許可条件で制限される典型です。許可・届出の際に「夜勤明けには入れない」などの条件を自分から示すと通りやすくなります。
まとめ|「病院は不可・施設や健診は可・単発もそこなら可」を先に押さえる
看護師の派遣副業は、①施行令2条4号(病院等・助産所・老健・介護医療院・居宅は派遣禁止、特養・有料・デイ・保育園・健診・イベントは可)、②35条の4と施行令4条1項19号(病院等以外の看護師業務は30日以内の単発派遣も可・年収要件不要)、③本業側の許可・届出と労基法38条の通算、の3本の線で決まります。准看護師は②の例外に入っていない点だけ注意。許可・届出を先に通し、場所の種別を確認して登録する——この順番で問題は消えます。線引きの全体像は看護師の副業はどこまでOK?をどうぞ。
参考にしている主な一次情報:労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律 第4条・第35条の4/同法施行令 第2条・第4条/同法施行規則 第28条の3/保健師助産師看護師法 第5条・第6条/労働基準法 第38条/地方公務員法 第38条(いずれもe-Gov法令検索)/国税庁「給与所得者で確定申告が必要な人」。
※情報は執筆時点のもので、派遣会社ごとの登録要件・本業の就業規則・自治体の住民税の取扱いは個別に異なります。実際に動く前に、派遣元と本業の人事担当にご確認ください。
