「メルカリで不用品を売るのは副業?」——公務員から最も多く聞かれる質問の一つです。答えは、自分の不用品を処分する範囲なら副業ではなく許可も不要、仕入れて売る(せどり・転売)を反復継続すれば地方公務員法38条の「自ら営利企業を営む」に当たり許可の対象、そして許可は出にくい、です。分かれ目は「売った金額」ではなく「仕入れの有無・反復継続・利益の意図」。この記事は、地方公務員法38条・33条・35条と、所得税の生活用動産の非課税(所得税法9条1項9号)を根拠に、公務員のフリマアプリ・ネット販売の線を「不用品の処分」「せどり・転売」「ハンドメイド」「チケット・限定品」「税金」で整理します。自衛官版は自衛官の物販・せどり、創作物の販売は公務員の同人活動・ハンドメイド販売へ。
結論:不用品の処分は副業ではない(税金も非課税)。仕入れて売るは「自営」で許可が要り、出にくい。限定品の転売は信用の問題も。職場の物・職務で得た物は売れない
| 形 | 38条 | 税金 | 見立て |
|---|---|---|---|
| 自分・家族の不用品(衣類・家具・家電・本・ゲーム)を売る | 対象外 | 生活用動産の譲渡は非課税(1点30万円超の貴金属・美術品等を除く) | ◎ |
| 引越し・断捨離で大量に売る(一時的) | 対象外(処分) | 同上 | ◎ 一時的なら問題なし |
| 安く買って高く売る(せどり・転売)を反復 | 「自ら営利企業を営む」=許可 | 雑所得・事業所得(課税) | ✕ 無許可は違反。許可は出にくい |
| 限定品・チケットを買って転売 | 同上+信用(33条)。チケット不正転売禁止法の問題も | 課税 | ✕ |
| 自作のハンドメイドを販売 | 規模により許可(創作活動) | 課税(経費を引いた所得) | △ |
| 職場の備品・記念品・職務で得た物を売る | 38条以前に不可(横領・信用失墜) | — | ✕ |
線①:38条——「営む」かどうかは4つの要素で
地方公務員法38条1項は「自ら営利企業を営む」ことを許可制にしています。フリマアプリで物を売る行為が「営利企業を営む」に当たるかは、次の要素で判断されます。
- 仕入れの有無:売るために買ったか(せどり)、自分で使うために買って不要になったか(処分)
- 反復継続:毎週・毎月、継続的に出品しているか
- 利益の意図:差益を狙って価格を調べて買っているか
- 規模:在庫を持つ、出品数・売上が継続的にある
「年に数回、不要になった物を売る」は処分。「毎週セール品を仕入れて売る」は営利企業です。中間の「趣味で集めた物を少しずつ売る」「子どもの成長で不要になった物を定期的に売る」は処分の側で、仕入れがなければ38条の対象にはなりません。判断に迷う規模なら、人事に「この形は対象か」と聞いておけば、後で「知らなかった」にはなりません。
線②:せどり・転売の許可が出にくい理由
執筆・講演と違い、物販は「商業」そのもので、自治体の許可類型に挙がっていないことが多い。さらに、
- 勤務時間中の出品・発送・問い合わせ対応が起きやすく、35条(職務専念義務)の懸念
- 限定品・人気商品の転売は、社会的に批判される形で33条(信用失墜)の懸念
- 仕入先・販売先が自治体の取引先と重なる可能性(利害関係)
- 事業規模の拡大が見込まれ、「職務が主」の前提と合わない
申請しても出にくく、無許可で続けて発覚すれば減給または戒告の標準例。規模が大きい・長期・隠蔽で重くなります。
線③:チケット・限定品——38条以外の問題
チケット不正転売禁止法は、興行主の同意なく、業として定価を超える価格で特定興行入場券を転売することを禁じています。「業として」でなくても、公務員が限定品・チケットを転売して利益を得る形は、33条(信用失墜)の観点で問題になりやすく、SNSで特定されれば処分の入口です。抽選で当たった限定品を定価で譲る程度なら処分ですが、転売目的で繰り返せば営利企業です。
線④:職場の物・職務で得た物
職場の備品・消耗品・記念品・視察で受け取った物・住民からの贈答品を売ることは、38条以前に横領・信用失墜・倫理規程の問題です。「もらった物だから自分の物」でも、職務に関連して受け取った物の換金は重く扱われます。
線⑤:税金——処分は非課税、営利は課税
所得税法9条1項9号により、「自己又はその配偶者その他の親族が生活の用に供する家具、じゅう器、衣服その他の資産で政令で定めるもの」の譲渡による所得は非課税です(生活用動産。衣類・家具・家電・自家用車など)。不用品をいくら売っても申告は不要。例外は、1点(1組)30万円を超える貴金属・宝石・書画・骨董・美術品で、これらの譲渡益は譲渡所得として課税されます。
一方、仕入れて売った利益(せどり)は雑所得・事業所得で、経費(仕入・送料・手数料)を引いた所得が年20万円を超えれば所得税の確定申告、20万円以下でも住民税の申告が必要です。許可を得て行う場合の帳簿は、売上・仕入・送料・手数料の記録が要ります。帳簿と申告書を一か所で済ませたい場合は、弥生のクラウド確定申告ソフトのような会計ソフトを使う方法があります(料金・対応範囲は公式サイトでご確認ください)。[PR]
発覚の経路|物販は「記録が残る」
- 住民税の通知:せどりの所得を申告すれば翌年6月の通知で本業に伝わる(普通徴収を選べても、許可がなければ違反は変わらない)
- 無申告の場合の税務調査:フリマアプリ・決済サービスの取引データは税務当局が把握し得る
- 同僚・SNS:出品者名・発送元・SNSでの宣伝から特定される
- 購入者とのトラブル:返品・未発送の苦情が職場に届く
処分の見立て
| 形 | 根拠 | 見立て |
|---|---|---|
| 無許可のせどりを継続 | 38条 | 標準例は減給または戒告。規模・期間・隠蔽で重く |
| 勤務時間中に出品・発送・問い合わせ対応 | 35条 | 38条に重なり重く |
| 限定品・チケットの転売が報道・SNSで拡散 | 33条 | 減給〜停職 |
| 職場の物・贈答品の換金 | 横領・倫理規程・33条 | 停職〜免職+刑事責任 |
| 不用品の処分 | — | 問題なし |
発覚前に自ら申し出ることは、処分を軽くする方向に働きます。「まだ小さいから」は、発覚時に「継続していた」と評価されます。
「処分」のまま続ける運用
- 売る物は「使っていた物」だけ:売るために買わない。セール品の「ついで買い」も仕入れ
- 出品は勤務時間外に:休憩中のスマホ出品も避ける
- 出品者名は個人のまま:ショップ化・SNSでの宣伝をしない
- 高額品の記録:1点30万円超の貴金属・美術品を売ったら譲渡所得の申告を確認
- 年1回振り返る:「売った物のうち、買った目的が転売だったものはないか」
自己診断|「処分」か「営利」か
| 問い | 処分 | 営利 |
|---|---|---|
| 売る物はどこから来たか | 自分・家族が使っていた | 売るために買った |
| どのくらいの頻度か | 年に数回・不定期 | 毎週・毎月 |
| 次に売る物を持っているか | ない | ある(在庫) |
| 価格をどう決めるか | 処分できればよい | 相場を調べて差益を狙う |
| 出品者名・宣伝 | 個人のまま | ショップ名・SNSで宣伝 |
右の列が2つ以上なら、営利と見られる前提で考えてください。
物販の代わりに「許可が出る形」で収入を作る
物販の知識・目利きを活かすなら、せどりそのものではなく、執筆(商品レビュー・ジャンル解説)・写真撮影・出品代行のような「報酬を得て事務に従事」の形に組み替えると、執筆・制作の類型として許可の余地があります。案件の相場はランサーズのようなクラウドソーシングで「商品 記事」「レビュー 執筆」などと検索すると把握できます(受注は許可の後に)。[PR]
よくある質問
Q1. 趣味で集めたフィギュアを少しずつ売っている。月に数万円になる
自分で楽しむために集めた物の処分なら38条の対象外で非課税です。ただし「売るために買い足している」実態があれば仕入れ=営利。コレクションの入れ替えの範囲にとどめてください。
Q2. 子ども服を毎月まとめて売っている
成長で不要になった物の処分で、反復していても仕入れがなければ対象外です。
Q3. 家族名義のアカウントでせどりをすれば?
仕入れ・出品・発送・利益の帰属が自分なら、名義にかかわらず「自ら営む」です。
Q4. せどりの許可を申請したら出る?
出にくい類型です。申請自体は可能で、規模・利害関係・勤務時間を使わないことを示して判断を仰ぐことになります。無許可で続けるより、申請して不許可のほうが後の立場は軽くなります。
Q5. ポイント還元で買った物を売るのは仕入れ?
自分で使う目的で買い、不要になって売るなら処分です。還元を目当てに買って売ることを繰り返していれば、実態は仕入れ=営利です。
Q6. 退職後は自由?
38条は外れます。古物を仕入れて売る事業は古物商許可(古物営業法)が必要な場合があるので、退職後に開業するなら警察署で確認してください。
まとめ|不用品の処分は自由で非課税。仕入れて売るは「自営」で許可が出にくい。職場の物は売らない
公務員のフリマアプリは、自分の不用品の処分なら38条の対象外で税金も非課税(1点30万円超の貴金属等を除く)。仕入れて売る(せどり・転売)を反復継続すれば「自ら営利企業を営む」で許可が要り、商業・信用・職務専念の観点から出にくい類型。限定品・チケットの転売は信用の問題が重なり、職場の物・職務で得た物は38条以前に不可。分かれ目は金額ではなく「仕入れ・反復・利益の意図・規模」です。物販の知識を活かすなら執筆・代行の形に組み替える。公務員全体は公務員の副業ガイドをどうぞ。
参考にしている主な一次情報:地方公務員法(昭和25年法律第261号)第33条・第35条・第38条/所得税法(昭和40年法律第33号)第9条第1項第9号(生活用動産の譲渡の非課税)・第33条/特定興行入場券の不正転売の禁止等による興行入場券の適正な流通の確保に関する法律/古物営業法(いずれもe-Gov法令検索)/国税庁「譲渡所得の対象となる資産と課税方法」「給与所得者で確定申告が必要な人」。
※情報は執筆時点のもので、物販の許可の運用は自治体ごとに異なります。実際に動く前に、所属の人事担当にご確認ください。

