平日は授業と校務で埋まっていて、副業に使えるとしたら土日しかない——教員が副業を考えるとき、まずここに行き着きます。ところが実際に土日で組もうとすると、部活動や行事で週休日に出勤した分が平日に振り替わるため、「土曜に入れた予定が動かせない」という問題にぶつかります。結論から言うと、土日の副業は時間帯の問題ではなく「週休日の振替」と「承認の範囲」の設計問題です。この記事は、給特法3条・6条と超勤4項目の政令、地公法38条・教特法17条を根拠に、土日だけで組む副業の設計と、申請書への書き方を整理します。オンラインで教える形は教員のオンライン英会話講師、承認申請の全体像は教員の兼業承認申請の書き方へ。
結論:土日は「週休日」だから入れやすい。ただし振替で崩れる
| 論点 | 結論 | 根拠 |
|---|---|---|
| 土日に副業をしてよいか | 勤務時間外なので時間の重なりはない。ただし報酬を得るなら許可・承認は必要 | 地公法38条1項/教特法17条1項 |
| 土日と祝日は同じ扱いか | 違う。多くは土日=週休日、祝日・年末年始=休日で別に扱われる | 給特法6条3項 |
| 部活で土曜に出た分は | 週休日の振替で平日が勤務を要しない日に変わる=予定が動く | 勤務時間条例(自治体ごと) |
| 時間外勤務手当は出るか | 出ない。教職調整額(給料月額の10%・幼稚園4%)が代わり | 給特法3条1項・2項 |
| 時間外勤務を命じられる場合 | 原則命じない。命じるのは超勤4項目で臨時・緊急のやむを得ない必要があるときだけ | 平成15年政令484号 |
線①:土日は「週休日」——勤務時間が割り振られていない日
公立学校の教員の勤務時間は、自治体の条例で定められています。多くの自治体では、土曜と日曜が週休日(正規の勤務時間を割り振らない日)とされています。ここは休日(祝日法による休日・年末年始のように、勤務を要しないが給与の対象になる日)とは別の概念です。
給特法6条3項も、この2つを分けたうえで、「一般職の職員の勤務時間、休暇等に関する法律第十四条に規定する祝日法による休日及び年末年始の休日に相当する日」などに正規の勤務時間中に勤務させる場合について、6条1項(政令の基準に従い条例で定める場合に限る)を準用すると定めています。
副業の観点で意味があるのは、週休日には正規の勤務時間が割り振られていないという点です。つまり土日に副業を入れても、本務の勤務時間と重なりません。労働時間の通算という論点も、雇用の副業でなければ生じません。土日が「入れやすい」のはこのためです。
線②:それでも承認・許可は要る——時間の問題ではなく報酬の問題
ここを取り違える人が多いところです。地方公務員法38条1項は、「職員は、任命権者の許可を受けなければ……報酬を得ていかなる事業若しくは事務にも従事してはならない」と定めています。条文に「勤務時間中は」という限定はありません。勤務時間外である土日であっても、報酬を得て従事するなら許可の対象です。
教育に関する内容であれば、教育公務員特例法17条1項の兼職承認で扱われることもあります。こちらは「本務の遂行に支障がないと任命権者において認める場合には、給与を受け、又は受けないで」従事できるという作りで、無報酬でも承認の対象になり得る点が38条と違います。
「土日だから自由」という理解は誤りです。土日であることは、「本務の遂行に支障がない」と説明しやすい材料ではありますが、手続を省ける理由にはなりません。
線③:いちばんの実務問題——週休日の振替
土日の副業でもっとも崩れやすいのが、ここです。部活動の指導、休日の行事、対外試合の引率などで週休日である土曜に勤務した場合、多くの自治体では「週休日の振替」が行われます。土曜に勤務した代わりに、その週または前後の期間内の平日が勤務を要しない日になる、という仕組みです。
副業の側から見ると、これは次の意味を持ちます。
- 土曜に副業の予定を固定で入れていると、部活や行事と衝突する(振替は勤務なので、副業を優先できない)
- 振替で平日が空くので、そこに副業を入れられる可能性が生まれる(ただし直前に決まることが多く、固定の予定には向かない)
- 年間の行事予定表を先に見ることで、衝突しやすい時期がわかる
したがって、土日の副業を続けるなら、「毎週固定」ではなく「自分で日を選べる形」を選ぶのが現実的です。予約制で自分がコマを開ける形、あるいは納期だけ決まっていて作業日は自由な形(教材作成・執筆・採点など)のほうが、振替に強い設計になります。
線④:なぜ土日に副業を考えることになるのか——給特法の構造
給特法3条1項は、教育職員に給料月額の100分の10(幼稚園の教育職員は100分の4)に相当する額を基準として、条例で定めるところにより教職調整額を支給すると定めています。そして3条2項が、「教育職員については、時間外勤務手当及び休日勤務手当は、支給しない」と定めています。
さらに6条1項は、正規の勤務時間を超えて勤務させる場合を「政令で定める基準に従い条例で定める場合に限る」とし、その政令(平成15年政令484号)は「原則として時間外勤務を命じないものとすること」としたうえで、命じられる業務を次の4つに限っています。
- 校外実習その他生徒の実習に関する業務
- 修学旅行その他学校の行事に関する業務
- 職員会議に関する業務
- 非常災害の場合、児童又は生徒の指導に関し緊急の措置を必要とする場合その他やむを得ない場合に必要な業務
しかもこれらは「臨時又は緊急のやむを得ない必要があるときに限る」という条件付きです。つまり制度の建前としては、教員に時間外勤務は原則として命じられない。それでも実際には勤務時間外の業務が発生し、その分の手当は出ない——この構造が、収入を増やす手段として副業に目が向く背景になっています。制度の是非はここでは扱いませんが、「時間外の対価が別に出るわけではない」という前提は、副業を設計するうえで押さえておくべき点です。
土日で組める副業の形|振替に強い順
| 形 | 振替への強さ | 特徴 |
|---|---|---|
| 納期だけ決まっている仕事(教材作成・執筆・採点・校閲) | 強い | 作業日を自分で動かせる。土曜が潰れても平日夜に回せる |
| 予約制で自分がコマを開ける形(オンライン指導) | 中〜強い | 開ける枠を月単位で決められるサービスなら振替に対応しやすい |
| 単発・スポット(模試監督・検定の試験監督) | 中 | 日程が先に決まるので、行事予定と突き合わせて受ければよい |
| 毎週固定のシフト(塾の講師など) | 弱い | 振替・行事と衝突しやすい。休むと相手に迷惑がかかる |
「土日に固定シフトで働く」形は、収入が読みやすい代わりに、振替が入るたびに調整が必要になります。最初の1年は自分で日を選べる形から始めて、行事のパターンをつかんでから固定に移すのが、続けやすい進め方です。
オンラインで教える仕事は、雇用契約ではなく「講師登録」という形をとるところもあります。たとえばよみかきそろばんくらぶのオンライン先生募集は、自宅からZoomで個別に指導する形で、雇用契約でも業務請負契約でもない講師登録という契約形態です(源泉徴収は行われないため、所得額によっては自分で確定申告をすることになります)。月曜〜土曜の7〜21時の中から可能な時間を選ぶ形なので、行事や振替の入りやすい時期を避けて枠を決める組み方ができます。応募には大卒であること・長期(最低3年以上)続けられることといった条件があり、Zoomに必要な機材や回線は自分で用意します。在職中の方は、契約の形にかかわらず先に承認・許可の手続きを済ませてください。条件や募集状況は変わることがあるため、最新の内容は公式サイトでご確認ください。[PR]
申請書の書き方|土日限定で出す場合
「土日に限定する」と自分から書くのは、承認を得るうえで有利に働きます。教特法17条1項が「本務の遂行に支障がないと任命権者において認める場合」という作りである以上、支障がないと言える材料を出すのは申請する側だからです。
| 欄 | 書き方の例 |
|---|---|
| 従事する日 | 週休日(土曜・日曜)に限る。平日および勤務を要する日には従事しない |
| 従事する時間 | 1日あたり4時間以内、月あたり合計24時間以内 |
| 行事等との関係 | 部活動の指導・学校行事・週休日の振替が入る日は従事しない |
| 対象 | 勤務校の児童生徒および保護者は対象としない |
| 報酬 | 1件あたりの単価と月の見込み額 |
「行事等との関係」の行を自分から書いておくと、振替が入ったときに副業を休むことが申請の前提として共有されます。逆にここを書かずに始めて、部活の日に副業を優先したことが知られると、支障がないという前提そのものが崩れます。
年間の見通しを立てる|衝突しやすい時期
学校の年間行事予定表を見ながら、副業を入れにくい時期を先に潰しておくと、無理な約束をせずに済みます。一般的に衝突しやすいのは次のあたりです。
- 4月〜5月上旬:年度始め、家庭訪問、修学旅行の準備
- 6月・10月:体育祭・文化祭などの行事とその準備
- 夏季・冬季の大会期間:部活動の引率で週休日が埋まりやすい
- 学期末:成績処理と面談
- 入試の時期:中学・高校では業務が集中する
逆に、長期休業中(夏季・冬季)は、部活動の有無によっては時間を作りやすい時期になります。ただし長期休業中も勤務日であることに変わりはないので、勤務時間中に副業をしないことは当然の前提です。
税金|土日だけでも申告は必要
副業の所得は、雇用なら給与所得、業務委託・講師登録なら雑所得または事業所得です。本業の年末調整では副業分は精算されないので、翌年の確定申告で合算します。副業の所得が年20万円以下で所得税の確定申告をしない場合でも、住民税の申告は必要です。
経費に入るのは、業務に使ったパソコン・通信費・教材費・交通費のうち業務分です。自宅で行う場合の家賃・光熱費の按分は経費の家事按分を参照してください。
よくある質問
Q1. 土日だけなら許可は要らないと聞きました。
誤りです。地公法38条1項に「勤務時間中は」という限定はなく、報酬を得て従事するなら勤務時間外でも許可の対象です。土日であることは支障がないと説明しやすい材料にはなりますが、手続を省ける理由にはなりません。
Q2. 週休日の振替はどのくらい前に決まりますか?
自治体・学校によりますが、行事や大会の日程が決まってから調整されることが多く、直前になることもあります。固定の予定を組みにくいのはこのためです。
Q3. 祝日は土日と同じ扱いですか?
違います。祝日法による休日や年末年始は「休日」として扱われ、給特法6条3項が別に規定しています。副業を入れる前に、自治体の勤務時間条例で自分の週休日と休日を確認してください。
Q4. 部活動の指導に報酬(部活動指導員の手当など)が出る場合は?
学校の業務として支給されるものは副業ではありません。外部の団体から報酬を受けて指導する場合は、38条・17条の対象になり得ます。部活動指導員と副業の関係を参照してください。
Q5. 教職調整額があるから副業で稼ぐのはおかしい、と言われました。
教職調整額(給特法3条1項)は時間外勤務手当・休日勤務手当を支給しないこと(同3項2項)と対になった制度で、勤務時間外の私的な活動を制限するものではありません。制限の根拠になるのは38条・17条の手続です。
Q6. 土曜に副業、日曜に部活、という組み方は可能ですか?
制度上は可能ですが、週休日が2日とも埋まることになります。給特法6条2項が「教育職員の健康と福祉を害することとならないよう勤務の実情について十分な配慮がされなければならない」と定めている趣旨からも、休息の時間を残す設計をおすすめします。
Q7. 承認を取った後、行事で従事できない月が出ても問題ありませんか?
問題ありません。承認は上限を定めるもので、下回る分には支障がありません。逆に上限を超えそうな場合は、変更の届出が必要かを所属に確認してください。
まとめ|土日は「入れやすい日」だが「動く日」でもある
土日は多くの自治体で週休日にあたり、正規の勤務時間が割り振られていないため、副業の時間を確保しやすい日です。ただし報酬を得るなら地公法38条1項の許可(教育に関するものは教特法17条1項の承認)が必要で、土日であることは手続を省ける理由になりません。実務でいちばん効くのは週休日の振替で、部活動や行事で土曜に勤務すれば平日が振替日になり、固定シフトの副業は崩れます。だから自分で日を選べる形(納期だけ決まった仕事・予約制の指導)から始めるのが現実的です。申請書には「週休日に限る」「行事・振替の日は従事しない」と自分から書いておくと、承認も運用も安定します。
参考にしている主な一次情報:公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法(昭和46年法律第77号)第3条・第6条/公立の義務教育諸学校等の教育職員を正規の勤務時間を超えて勤務させる場合等の基準を定める政令(平成15年政令第484号)/地方公務員法(昭和25年法律第261号)第38条/教育公務員特例法(昭和24年法律第1号)第17条。条文はe-Gov法令検索で確認しています。
※情報は執筆時点のものです。週休日・休日の定めと振替の運用は自治体の条例・規則によって異なります。手続の前に所属の教育委員会・人事担当にご確認ください。

